背骨は、首から腰まで24個の骨がつながってできていて、それぞれの骨の積み重なっている円筒形の部分を「椎体(ついたい)」といいます。圧迫骨折とは、この椎体が潰れてしまう骨折です。高齢の女性に多く、尻もちをつく、重い物を持つなどの大きな負荷、そして骨粗鬆症が主な原因です。背骨は体を支え、脊髄を保護する重要な役割を果たしています。この背骨が潰れてしまうと、強い痛みや日常生活への支障が出るほか、身長が縮んだり、背中が丸まったりして、見た目の老化にもつながります。
今回は圧迫骨折の症状や治療法、圧迫骨折の原因となる骨粗鬆症について、伊奈病院整形外科部長の石橋英明先生にお話を伺いました。
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保存療法で治らない場合は手術での治療が必要
背骨の圧迫骨折は、強い痛みがある場合でも大部分は手術ではなく保存療法を行います。手術が必要な場合は、骨や脊髄の状態に合わせて「椎体形成術」と「脊椎固定術」の2種類があります。それぞれの治療法を詳しく説明しましょう。
ただし、圧迫骨折の半数を超える症状のない骨折(形態骨折)は、治療は不要です。
脊椎圧迫骨折の治療
●保存療法
通常、圧迫骨折による背中や腰の痛みは強く、1週間は寝返りもつらく、起き上がれない状態が続きます。2週間くらい経つと起き上がりが可能になってくるので、それまではひたすら安静です。少し座れるようになると、立つこともできるのでコルセットを着用して歩く練をします。
高齢者の場合、長期間ベッドで安静にしていると、筋力が著しく低下したり、認知障害につながったりすることもあるので、注意が必要です。したがって、受傷後から筋肉が落ちないようにするリハビリから始めて、おおむね3~4週間程度で歩けるようになり、2カ月程度で骨がしっかりと固まってきます。
症状に応じて、痛み止めを服用します。また、骨粗鬆症の治療を始めます。
※骨折治癒促進のためのテリパラチドは保険適応外です。
●外科的療法
圧迫骨折に対して手術をすることになるのは、以下の3つの場合です。
(1)圧迫骨折の形が悪く、骨折した骨片で脊髄などの神経を圧迫して、強い痛みや下肢の麻痺がでている場合
(2)圧迫骨折を保存療法で治療したが、結果的に骨がしっかりつかなかった場合
(3)(1)、(2)のいずれでもないが、早く痛みを取りたい場合
これらの場合に対して、脊椎固定術または椎体形成術が選択されます。
●脊椎固定術
上記の(1)の場合、つまり強い痛みやしびれ、下肢の麻痺などの神経症状がある場合に行います。骨折した椎体がすぐ後ろにある脊髄を圧迫しているので、脊髄の通り道を広げて圧迫を取り、その上で骨折している椎体の上限の椎体にボルトを入れて、後方でロッド(棒)で固定します。上下の骨も弱くなっている場合も多いため、もうひとつ上、もうひとつ下の椎体にもボルトを入れたり、骨折した椎体のところに支えとなる骨や金具を入れることもあります。
●椎体形成術
上記の(2)の場合、うつぶせになった状態でレントゲンを見ながら骨折した椎体に骨セメントと呼ばれるペースト状の樹脂を注入して、その樹脂が10分程度でしっかり固まることで、安定化を図ります。
少し腰を反らせるようして骨セメントを入れる方法と、椎体の部分で特殊な風船を膨らませることで、すき間を広げてそこに骨セメントを入れる方法とがあります。どちらも痛みに対する効果が高く、手術の翌日には痛みが大幅に軽減することは少なくありません。ただし、椎体がバラバラに粉砕しているような場合は、骨セメントが後方の脊髄の方に流れ込んで麻痺の原因になることもあるため危険です。こうした場合は、脊椎固定術を選択することになります。
また、上記の(3)に対して、つまり早く痛みを取って動けるようにするために、骨セメントを使った椎体形成術を早期にする場合もあります。
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取材・文/笑(寳田真由美)