身長が2㎝以上低くなった、背中が丸い。それ、圧迫骨折かも?/圧迫骨折

身長が2㎝以上低くなった、背中が丸い。それ、圧迫骨折かも?/圧迫骨折 pixta_31948344_S.jpg背骨は、首から腰まで24個の骨がつながってできていて、それぞれの骨の積み重なっている円筒形の部分を「椎体(ついたい)」といいます。圧迫骨折とは、この椎体が潰れてしまう骨折です。高齢の女性に多く、尻もちをつく、重い物を持つなどの大きな負荷、そして骨粗鬆症が主な原因です。背骨は体を支え、脊髄を保護する重要な役割を果たしています。この背骨が潰れてしまうと、強い痛みや日常生活への支障が出るほか、身長が縮んだり、背中が丸まったりして、見た目の老化にもつながります。

圧迫骨折の症状や治療法、圧迫骨折の原因となる骨粗鬆症について、伊奈病院整形外科部長の石橋英明先生にお話を伺いました。

 

知らぬ間に背骨を骨折?
原因の多くは骨粗鬆症です

「背中が丸くなってきた」「寝返りのときに背中が痛い」「身長が低くなった気がする」こんな症状が出たら、圧迫骨折(背骨の圧迫骨折)を疑ってみる必要があります。

私たちの体は、脊椎(背骨)によって支えられています。立つときや歩くときも、脊椎の支えがなければ、その動作を維持することはできません。しかし、骨が弱くなってくると、ちょっとしたきっかけで、またはきっかけがなくても体の重みで脊椎が押しつぶされるように骨折してしまいます。これが、圧迫骨折です。

通常、圧迫骨折を起こすと、背中や腰の激しい痛みで寝返りや起き上がることもできなくなります。一方で、骨折しても痛みを感じない場合もあります。骨粗鬆症で徐々に背骨がつぶれていく場合です。「20代の頃と比べて、身長が2㎝以上低くなった」「最近、急に背中が丸くなってきた」といった症状に思い当たったら、圧迫骨折が心配です。痛みがないからと放置していると、さらに他の椎体も骨折するリスクが高まります。痛みのある、なしにかかわらず、早めに整形外科を受診しましょう。

「圧迫骨折の大半は、骨粗鬆症で骨が弱くなることで起こります。骨粗鬆症は「骨の強度が低下して骨折しやすくなった状態」と定義され、女性ホルモンが減少する閉経以降の女性に特に多く見られます。骨はカルシウムなどのミネラルだけでなく、半分はコラーゲンなどのタンパク質でできています。ビルに例えるならば、コラーゲン線維が鉄筋で、カルシウム分がコンクリートというわけです。

また、骨の強さの7割は骨密度、つまり骨の中のカルシウム分の量で決まります。あとの3割は骨質といわれ、骨の構造やコラーゲンの質が重要です。いくら骨密度が多くても骨質が弱いと、骨折のリスクが高まります。骨は硬さだけでなく、しなやかな強さが必要です。つまり、カルシウムとタンパク質の両方が大切なのです」と、石橋先生。

中高年以上の女性の骨折は、骨粗鬆症が原因であることが多く、骨折が寝たきりや認知症につながることも分かっています。現在の日本の骨粗鬆症患者数は、推定で男性300万人、女性980万人、総数は1280万人といわれていて、今後ますます増えていきます。また、年齢とともに有病率は増え続け、50代では男女差はそれほどでもありませんが、60代以上になると、圧倒的に女性の数が多くなります。そして、80代の女性では、骨粗鬆症にかかっている人が60%を超えているのが現状です。

『平成28年 国民生活基礎調査』によると、「介護が必要となった主な原因(女性)」の1位は認知症(20.0%)、2位が老衰(15.1%)、3位が骨折・転倒(14.9%)となっており、要介護になった女性の6.5人に1人は骨折・転倒が原因となります。そうならないためにも、骨の強さを保つことが必要です。

「背筋がしっかりと伸びている人は、いくつになっても若々しく見えます。そのためには、骨の強度を維持することが大切です。良い姿勢を保つことができれば、歩きやすく、転びにくい体でいることができます。そのために、骨粗鬆症対策は早めにしたいもの。まずは、自分の骨の状態を知っておくことが大切です。自治体の骨粗鬆症検診や人間ドックなどを利用して、積極的に骨密度を測るように心がけてください」(石橋先生)。

 

次の記事「1度骨折すると、次の骨折リスクは2~3倍!/圧迫骨折(2)」はこちら。

取材・文/笑(寳田真由美)

 

 

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石橋英明(いしばし・ひであき)先生

伊奈病院整形外科部長、NPO法人高齢者運動器疾患研究所代表理事。1988年東京大学医学部医学科卒業。三井記念病院、東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)整形外科などの勤務を経て、1992年より東京大学大学院医学系研究科にて骨代謝研究に従事。1996年に博士学位を取得し、米国ワシントン大学医学部に留学。帰国後、東京都老人医療センター整形外科に勤務、2001年より同センター整形外科医長。2004年より現職。専門は骨粗鬆症、関節リウマチ、関節外科。著書に『よくわかる最新医学 骨粗鬆症 予防・検査・治療のすべてがわかる本』(主婦の友社)、『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(共著)』(ライフサイエンス出版)ほか。

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