「2人に1人がかかる」と言われるほど身近な病気である「がん」。ただ、断片的な情報は知っていても、検診や予防、基礎知識など「実はよくわかっていないのよね」という人も多いのではないでしょうか? そこで「がんにまつわる気になる疑問」を、最新の知識を備えたがん治療のスペシャリスト・明星智洋先生に尋ねた注目の新刊『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)から一部を抜粋、最新の「がんの知識」を連載形式でお届けします。
治せるがん、治せないがん、ステージについて教えてください!
――では、ここからは自分も含め、家族などの身内がもしもがんになったら......ということで、実際にがんであることがわかったときの話を聞かせてください。
そもそも、がんになったら治療できるものなんですか?
明星先生 以前は、がん=死というイメージがあったかもしれませんが、最近では医療技術もずいぶん進み、必ずしもがん=死ではなくなってきています。
――治るがんと治らないがんの違いはあるんですか?
明星先生 がんが治るかどうかは、そのがんのステージやがんの種類、患者さんの状態によって異なってきます。
――ステージってよく聞く言葉なんですが、どんな違いがあるんでしょう?
明星先生 がんのステージはがんの種類によってそれぞれ細かく分類が定められています。多くの場合は、ステージⅠからIVまでの4段階に分けられます。
――それぞれ教えていただけますか?
明星先生 はい、説明していきましょう。まずステージIは、がんがその場所だけにあり、他にリンパ節などが腫れていない状況で、手術によってかなりの確率で治癒を目指せます。
ステージIIは、がんのある部位の近くのリンパ節が腫れているような状況で、手術の際に少し範囲を広げて切除する必要があります。しかし、これも多くの場合は治癒を目指すことができる手術になります。
ステージIIIは、腫瘍(しゅよう)のサイズが大きく広がり、リンパ節転移も多数あるような状況です。手術ができないこともあるし、もし手術できたとしてもその後再発率が高くなる状況です。そのため、手術後に再発予防として化学療法を行うこともあります。
ステージIVは、離れた臓器にも転移しているような状態で、通常は治癒的な切除はできません。つまり、抗がん剤治療が選択されることが大半です。
――なるほど、治療で抗がん剤を使っていくのはステージIII以降というわけですか!
明星先生 はい。そうなんです。ステージが進行するごとに治療の難易度が高まっていくので、早期発見、早期治療が原則というわけです。ステージIVまで達していない場合であれば、手術や放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせることで治癒を目指せる可能性が十分にあると思われます。
――白血病もがんの一種だと聞きましたが、白血病の場合は血液が問題なわけで、手術ができませんよね?
明星先生 白血病や悪性リンパ腫といった血液がんは抗がん剤治療が基本になります。実は血液がんの場合は抗がん剤がとっても効きやすく、ステージが進行していても十分に治癒できる可能性があるんです。
――おお!それは希望が持てる話です。
明星先生 まとめると、固形がんのステージⅠ~IIIと、血液のがんはステージIVでも治る可能性があるということです。
――がんと言えば再発というキーワードをよく聞きますけど、いったいどんな段階で「治った!」と言えるものなんでしょう?
明星先生 がんを治療したあと、CTや内視鏡検査、PET検査などで画像検査をしたとき、がんが確認できなくなった状態を「寛解(かんかい)」と呼びます。
――寛解......難しい言葉ですけど、つまりもうがんは消えてない状態、ということですよね?
明星先生 はい、ただし、あくまでもCTなどの画像上では、という話です。細胞1個1個のレベルまで検索できているわけではないので、まだ再発する可能性がある状況です。では、いつ「治った」と言えるかというと、この寛解状態が5年間継続したとき、再発のリスクは極めて低いと判断して、初めて治癒という言葉を使うことが多いです。
――がんが確認できなくなってから5年で治癒なんですね。
ただ、中には5年を越えて再発してくるタイプのものもあるので、その場合は、主治医と相談して、フォローの期間を延ばすこともあります。
【まとめ】
大半のがんは、ステージIIIまでなら治癒できる可能性がある。
ただし、血液のがんはステージIVでも治癒可。
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