「2人に1人がかかる」と言われるほど身近な病気である「がん」。ただ、断片的な情報は知っていても、検診や予防、基礎知識など「実はよくわかっていないのよね」という人も多いのではないでしょうか? そこで「がんにまつわる気になる疑問」を、最新の知識を備えたがん治療のスペシャリスト・明星智洋先生に尋ねた注目の新刊『先生!本当に正しい「がん」の知識を教えてください!』(すばる舎)から一部を抜粋、最新の「がんの知識」を連載形式でお届けします。
ほくろが「がん」になると超やっかいな悪性黒色腫になる!
――昔からよく聞く話なんですけど、「ほくろががんになる」と言うじゃないですか。本当なんですか?
明星先生 結論から言うと、本当ですね。そもそもほくろは、医学的な名称としては色素性母斑(しきそせいぼはん)という腫瘍なんです。
――ええっ、腫瘍というくくりなんですか!?
明星先生 そうです。腫瘍といっても良性のものなのですが、良性のほくろが慢性的な刺激や紫外線などを受け続けると、悪性化してがんになる可能性があります。その場合は悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)という、とってもたちの悪いがんに変身します。処置が遅れるとどんどん転移していってしまうんです。
――ええ?! とんでもなく怖いですね。紫外線は太陽を浴びるということだと思うんですけど、刺激を受けるっていうのはどういうことですか?
明星先生 刺激というのは、物理的にこすれたりとか、何らかの痛みを与えたりとかということです。その意味では、特に要注意なのは足の裏のほくろです。
――足の裏?
明星先生 はい、歩くときにいつも刺激を受けていますから悪性化する危険があります。ほくろのサイズが大きくなったり、盛り上がっていたり、形がいびつだったりした場合は早めに皮膚科で受診したほうがいいでしょう。
――なるほどなぁ、足の裏ってあまり見ないですからね......。っていうか、先生、僕の足の裏にもあるんですけど、悪性かどうか見分ける方法ってないんですか?
明星先生 はい、判断するためのツールとして「ABCDE」というのがあります。
――ABCDE?
明星先生 はい、それぞれAsymmetry(非対称)、Border(輪郭がギザギザしている)、Color(色むらがある)、Diameter(大きい)、Evolving(変化がある)の略になります。このようなサインがあれば、早目に大きな病院の皮膚科に受診したほうがいいでしょう。
■ほくろが悪性黒色腫かどうかを見分ける「ABCDE」ツール
Asymmetry(非対称) 形が左右で非対称
Border(輪郭) ほくろの輪郭がギザギザしている
Color(色むら) 色むらがある
Diameter(大きさ) 直径が6ミリ以上
Evolving(変化) 大きさ、色、形に変化がある
――観察しておくことが大事なんですね。
明星先生 実は、私も医学生のときにこの勉強をして不安になって、足の裏を見たら、なんと5ミリ程度のほくろがありまして(笑)。
――ええ?!?
明星先生 輪郭がいびつだったので、不安になって近所の皮膚科に行ったら、私が勉強している大学病院を紹介されました(笑)。
――そんなまさか! で、どうだったんですか?
明星先生 実は悪性になりかけの「ぎりぎりセーフ」の状態ではあったのですが、悪化する可能性が高かったのですぐに切除してもらいました。
――危なかったんですね! 切除は簡単にできるんですか?
明星先生 はい、悪性になりかけくらいの段階でしたので手術はすぐに終わります。ちなみにですが、ほくろを切除するときにはほくろから数ミリの余裕をもって大きめに切除します。もし悪性黒色腫の場合は切除する範囲が狭いと血流に乗って、全身に拡散してしまうリスクがあるからです。私ももう少し見つけるのが遅くなっていたらどうなっていたかわかりません。
――早期発見、本当に大事なんですね。ちょっとでも気になったら皮膚科へ、ですね。
【まとめ】
刺激を常に受けている足の裏のほくろは要注意!
ABCDEで観察してみて、おかしいと思ったら皮膚科へ。
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