男女とも健康長寿には「男性ホルモン」が重要!? 生きる気力につながる「テストステロン補充」の選択肢

女性がテストステロン補充する時代

熊ちゃん先生がおっしゃっていたように、閉経後の中高年以降の女性にとってはテストステロンが元気の源。最後の砦とも言えるテストステロンさえも欠乏してしまうと、フレイルが進行し、元気に暮らせなくなってしまう可能性があります。私も外来で、更年期以降の女性のテストステロン補充で、うつが改善し、元気を回復した症例をいくつも見てきた経験から、同じ思いを抱いています。

ここでは、私の外来の患者さんのエピソードをご紹介していきましょう。

70代女性、元気がなく何もできず1日中ぼーっとしていて、認知症を診断されてしまいました。頻尿もあり、今回夫がつきそってこられました。さまざまな検査をしたところ、テストステロン値が低いことがわかりました。そこで、適切なテストステロン補充療法をはじめると、お元気になって、家事もできるまでに回復されました。定期的に通院されているので、ある時夫が、「あの薬はエッチになるのでしょうか?」と聞いてきたので話を伺うと、妻が布団に入ってきて夫を襲ったと!(笑)。隣にいた妻は「はずかしい......」と笑って、夫も「驚いたけど、うれしかった」とまんざらでもないご様子。私もなんだかうれしい気持ちになるエピソードでした。

テストステロン補充が認知症に直接効いたかどうかはまだ明らかではありませんが、元気が湧いてきて、以前のような気力が戻ってきたのでしょう。このように効果を実感した症例を検証しながら、体調によって投与法を変更しながら、テストステロン補充療法を継続しようと考えています。

男性では、テストステロンが少ない人は命が短く、認知症も進むことも明らかになっています。女性では、まだ明らかなエビデンスは出ていませんが、これからの世界では、人間の健康長寿のためにはテストステロンが重要になることは確かです

「男女ともに健康長寿のために、テストステロンを補充せよ! 50年もたてば、人生150年になるかもしれない。長生きすればするほど男性だけではなく、女性も男性ホルモンのサポートが必要であることをみなさんに意識してほしい」と熊ちゃん先生。

女性も男性ホルモン=テストステロンを補充することで元気になります。しかし「男にも更年期が存在すること」も40年を経て、ようやく世に知られるようになったぐらいですから、まだまだそのことが認知されるには時間がかかるかもしれません。しかしテストステロン補充が、ポスト更年期、そして熟年期の男女に広く普及すれば、元気で幸せな高齢者が多い日本は、素晴らしい国になるはずです。その頃には、「テストステロンはセックスに関係するだけのホルモンだ」という誤解が、きっととけているはずです。

 

関口由紀

『女性医療クリニックLUNAグループ』理事長。医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医、日本性機能学会専門医、日本東洋医学会専門医、横浜市立大学医学部客員教授、女性総合ヘルスケアサイト・フェムゾーンラボ社長、日本フェムテック協会代表理事。メディア出演多数。『「トイレが近い」人のお助けBOOK』(主婦の友社)、『女性のからだの不調の治し方』(徳間書店)、『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引き』(径書房)など著書多数。

※本記事は関口由紀著の書籍『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)から一部抜粋・編集しました。
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