男の生理、朝立ちを気にして
実はもうひとつ最大の特徴があります。一番重要なのは、早朝勃起、いわゆる朝立ちの有無です。これはエロチックな勃起とは全く無関係な男の生理で、テストステロン低下が鋭敏に出てきます。甘く見ていると命を縮める危険性があります。
女性の生理である月経はよく知られています。ストレスや加齢でホルモンバランスが乱れると、心身共にさまざまなトラブルを起こします。男の朝立ちもしかりで、男性ホルモンレベルと密接に関係しているのです。
朝立ちの仕組みを医学的に簡単に説明しましょう。私たちの睡眠は「レム睡眠」(浅い眠り)と、「ノンレム睡眠」(深い眠り)を、およそ90分ごとにくり返しています。このレム睡眠のときに、身体機能を調節するために副交感神経が働き内臓などを動かしていて、腸の親戚であるペニスも反応し勃起するのです(ちなみに、女性のクリトリスも勃起しています)。目覚めのときに自覚する勃起が「朝立ち」です。
その勃起時間を合計すると、20代の健康な男性では、睡眠中のほぼ半分。50代で約3分の1、60代でも約5分の1の時間は勃起をしています。しかし、テストステロンが減少すると、睡眠のリズムが崩れ、男の生理である朝立ちがなくなってきます。それを放置しておくと、テストステロンが下がり、女性と同じような更年期症状が襲ってくることになるのです。
朝立ちの喪失は、「血管が硬くなりはじめていますよ」という見逃せないサインでもあります。勃起は、陰茎の血管が拡張して、血液が流れ込むことによって起こります。つまり血管が柔らかく、よく収縮する状態でなければなりません。つまり早朝勃起がないと、血管が硬くなり、血液が流れ込みにくくなっている恐れがあると判断できる症状です。
陰茎の血管は、およそ1~2ミリと、体内でもっとも細い血管です。心臓の血管は3~4ミリ、頸動脈は5~7ミリですから、いかに細いかということがわかるでしょう。動脈硬化は、細い血管から順番にはじまります。つまり、動脈硬化の兆しを、早朝勃起の有無が教えてくれるのです。
朝立ち測定をするために、熊ちゃん先生は患者さんに『エレクトメーター(イラスト)』をつけて就寝してもらっていました。夜間の円周増加が2cm以下の場合に医学的に問題ありと考えています。自宅で挑戦したいなら、とてもアナログな方法ですが、切手の縁をペニスにまいて寝てみましょう。翌朝切れていれば、朝立ちしている証拠です。
いまや国際的にも、朝立ちの自覚がないことは「血管系疾患の警告サイン」だという認識が定着しつつあります。朝立ちがないという方は、男性ホルモンの測定とともに、動脈硬化の検査もあわせて行うことをオススメします。それが、脳梗塞、心筋梗塞での男の突然死を防ぐことにつながるのです。