医療機器メーカーのアバノス・メディカル・ジャパン・インクは、変形性膝関節症についての新たな治療方法「末梢神経ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」(以下、ラジオ波治療)を発表。6月1日から保険適用が開始されました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年8月号に掲載の情報です。
これまでの変形性膝関節症の治療
手術療法
関節鏡(内視鏡)手術、高位脛骨(けいこつ)骨切り術(骨を切って変形を矯正する)、人工膝関節置換術など。
薬物療法
痛み止めの内服薬や外用薬、ひざ関節内へのヒアルロン酸注射など、薬で炎症と痛みを抑える治療。
非薬物療法
運動によるリハビリテーションやひざを温める温熱療法、足底板やひざ装具など、薬を使わない治療。
新しいラジオ波治療
皮膚を通してひざの痛みを伝える神経に電極針を挿入し、ラジオ波という電流を流します。すると、針の周囲に熱が発生し、その熱によって神経を長期間、遮断する治療法です。ヒアルロン酸の関節内注射や痛み止めなどで痛みが改善しない人が対象となります。
ラジオ波治療の進め方
治療前
ターゲットとなるひざの末梢神経に局所麻酔薬を注入し、除痛効果があるかを確認。
治療
超音波ガイドのもと、ひざ周りの3カ所の末梢神経に専用の針を刺し、ラジオ波を当てる。針を抜いたら止血と皮膚の消毒を行う。
治療後
定期的に通院、リハビリをして状態を確認。除痛効果は1~2年続く。
これまで、変形性膝関節症の治療では、痛み止めやひざ関節内注射といった保存療法で効果が薄れてきた場合の選択肢は手術のみでした。
保険適用となったラジオ波治療は、手術をするには変形が軽度の人や長期間、保存療法中の人、高齢や持病などで手術のリスクが高い人が適応となります。
具体的な治療は、ターゲットとなるひざ周りの末梢神経にラジオ波を1カ所当たり2分30秒流して神経を焼灼(熱で凝固すること)することで、除痛効果を得られます。
「鎮痛剤などの保存療法は効果の持続時間が短く、最も長い関節内注射でも約1〜2週間。手術の場合、効果は10〜30年間続きますが、約2時間の手術や2〜3週間の入院を必要とし、金銭的な負担も大きい。ラジオ波治療は、体への負担が少なく、治療時間は45分〜1時間程、除痛効果は1〜2年続くと期待できます。海外の症例では、繰り返しの治療も行われています」と赤木將男先生。
ラジオ波治療で得られる効果は関節内注射に勝ると報告されており、保存療法と手術療法の間を埋める画期的な治療選択肢と言えます。
アバノス・メディカル・ジャパン・インクは、同日、変形性膝関節症の情報サイト「ひざ痛い.jp」も開設。
治療を実施できる医療機関(※)の検索もできます。
※ 2023年7月7日時点では、大阪市と広島市の2つのクリニック。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子