「転倒」に気を付けて! 血液サラサラの薬の注意点/NEWSなキーワード

日本脳卒中協会は、2021年より毎年10月を脳卒中月間と制定。バイオ・医薬品企業アストラゼネカはこのほど、脳卒中予防のために服用することの多い抗血栓薬について知っておきたい注意点を講演しました。今回は、国際医療福祉大学医学部教授の末廣栄一(すえひろ・えいいち)先生に、「血液サラサラの薬の注意点」についてお聞きしました。

転倒事故と抗血栓薬

東京消防庁によると、外傷により救急車で病院に運ばれる人の年齢は80代が最も多く、搬送された70〜80代の8割以上は転倒が原因、場所は約7割が自宅です。下記は、転倒により頭部外傷を負った65歳以上の人の抗血栓薬の内服率。血液をサラサラにする抗血栓薬を飲んでいる人が転倒した場合、副作用で大出血を起こすリスクが高まります。

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※(Suehiro E et al; World Neurosurgery 127,e1221-e1227, 2019)

主な血液サラサラの薬

抗血小板薬

血液の流れが速い動脈や心臓の血管に血栓ができるのを予防する薬。主に心筋梗塞・狭心症、下肢動脈閉塞症、脳梗塞後などに使われます。

●薬剤(成分名)
・アスピリン
・チクロピジン
・クロピドグレル
・シロスタゾール
・プラスグレル
・サルポグレラート

抗凝固薬

血液の流れが遅い静脈や心臓の内部に血栓ができるのを予防する薬。心房細動、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳塞栓症などに使われます。

●薬剤(成分名)
・ワルファリン 
・ダビガトラン 
・リバーロキサバン
・アピキサバン
・エドキサバン
・ヘパリン

転倒すると...

血液をサラサラにする薬は、血を固まりにくくして血流を良くする効果がある一方、いったん出血すると止まりにくくなります。転倒して頭を打ち、頭の中で出血すると、命取りにもなりかねません。

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予防は...

●転倒を防ぐ
「階段には手すり」「段差をなくす」「足元には照明をつける」「電気コードはまとめる」など、自宅内の工夫を。

●お薬手帳を常に携帯
緊急時に内服薬の種類を伝えられるよう、外出時はいつでもお薬手帳か服薬カードを携帯。

●見た目で判断せずCT検査をしてもらう
頭部をぶつけたらすぐにCT検査を。頭の内部でじわじわと出血し、急速に悪化することも。


日本人の死因の上位に入る脳卒中。

そのうち7割は脳の血管が詰まることで起こる脳梗塞です。

脳梗塞の予防には、血栓ができることを防ぐため、血液をサラサラにする抗血栓薬の服用が欠かせません。

一方で、年齢を重ねると転倒しやすくなりますが、抗血栓薬を服用している場合、転んで軽く頭をぶつけただけでも重症化しやすいといわれます。

「抗血栓薬を服用中の人が転倒した場合、抗血栓薬を飲んでいない人に比べて出血する割合が高くなります」と、末廣栄一先生。

では、転倒した場合の出血性合併症を避けるには何が必要でしょう?

「抗血栓薬を服用中の人が転倒した場合、薬の活性を抑制する中和療法を行います。薬の種類によって中和剤は異なりますので、何の薬を飲んでいるのか知ることが大前提。しかし、薬の種類が分からず対処が遅れるケースも。お薬手帳や服薬カードは常に身に着けるようにしてください」

軽症の場合も自己判断は禁物。

「ベッドから落ちただけでも、頭の中で出血が進む可能性があります。必ず専門医がいる病院を受診してください」

抗血栓薬を服用中の人は、転倒の予防はもちろん、いざというときのために日頃から対策をしておきましょう。

取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

国際医療福祉大学医学部教授

末廣栄一(すえひろ・えいいち)先生

山口大学医学部附属病院先進救急医療センター脳神経外科診療准教授などを経て現職。専門は、脳神経外科(頭部外傷、脳血管障害などの神経救急、神経集中治療)。

この記事は『毎日が発見』2022年12月号に掲載の情報です。

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