若々しさを維持するためには、血管が健康であることと、自律神経がしっかりと正常に働いていることが大切です。日本の血管研究をリードし続ける大阪大学微生物病研究所教授の髙倉伸幸先生に血管のお話をお伺いしました。
前の記事「血管の90%は毛細血管です。毛細血管の健康度を今すぐチェック/若返り健康法(2)」はこちら。
毛細血管の仕組みを理解して
不調や病気を予防しましょう
全身の至るところに張り巡らされている毛細血管は、全ての血管の9割以上を占めています。動脈や静脈などの血管の直径は0.2㎜~3㎝ であるのに対して、毛細血管の太さは、直径0.005~0.01㎜とかなりの細さ。単に細いだけでなく、他の血管とは構造も異なります。
「動脈や静脈といった毛細血管以外の血管は、内皮細胞を覆うように壁細胞がびっしりとへばりついており、 血液を漏らすことなく循環させています。一方、毛細血管は、内皮細胞 の周りに壁細胞がまばらに付いており、細胞の隙間から血液を適度に漏らしながら全身へと届けています。 そうすることで、酸素や栄養をスムーズに拡散させることができます」 と、髙倉先生。
他の血管とは構造が異なる毛細血管は、もろく、傷つきやすいという特徴があります。その量は、 70 代になると 30 代より約3割も減ってしまうというデータもあるほど。毛細血管がダメージを受けて減ってしまうと、血液成分(栄養や老廃物)が漏れ出してしまい、肌の老化や体の冷え、むくみなどの他、認知症や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、肝臓病など、さまざまな不調や病気につながります。
「毛細血管は、自ら新生する仕組みを持っています。その方法には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つは、弱って収縮し、丸まってしまった血管を伸張させるパター ン。もう一つは、純粋に新たな血管細胞が増えるパターンです。 40~50 代までは、血管細胞が増える能力が高いのですが、年齢を重ねるとその能力は低下していきます。そのため、日頃から積極的に運動などに取り組んで、毛細血管を伸張させることが大切です」(髙倉先生)。
毛細血管を衰えさせる大きな要因は、運動不足などで血流が滞ること。 「特に、むくみやすい人は毛細血管の機能が低下しています。また、睡眠不足の人は、就寝中に血管を修復できていない可能性が高く、注意が 必要です」(髙倉先生)。
次の回からは、毛細血管を元気にする方法をご紹介します。早速実践してみましょう。
毛細血管の仕組みを知りましょう
血液は動脈から中動脈→小動脈→細動脈という順で毛細血管内に流れていきます。その後、枝分かれや合流を繰り返し、細静脈へと流れます。
血管の構造
血管は、内側の「内皮(ないひ)細胞」と外側の「壁(へき)細胞」でできています。 両者が密着していることで、安定した構造を保つことができます。
毛細血管の働きは?
●全身の細胞に、酸素や栄養分を届けます。
●老廃物を回収して、静脈へと送ります。
毛細血管が老化すると
内皮細胞と壁細胞が必要以上にはがれやすくなり、もろくなった血管から血液が漏れ過ぎて全身に届かなくなります。
次の記事「毛細血管を修復して血管を健康に保つ。 血管の内側を支える分子を知ろう/若返り健康法(4)」はこちら。
取材・文/寳田真由美 イラスト/中川原 透