若々しさを維持するためには、血管が健康であることと、自律神経がしっかりと正常に働いていることが大切です。今回は、日本の血管研究をリードし続ける大阪大学微生物病研究所教授の髙倉伸幸先生に血管のお話を、疲労研究の第一人者で大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授も勤める梶本修身先生に自律神経と疲労の関係をお伺いしました。
若さの維持は、自律神経に負荷がかからない生活から!
私たちの体が健康であるためには、内臓や血管の機能を調整する自律神経という制御機能と、その制御を受けて働く血管の働きが重要です。「血管には、動脈系、静脈系、毛細血管があります。中でも、動脈から毛細血管に至る直前に存在する細動脈内の平滑筋(へいかつきん、※)までは、自律神経の働きに影響を受けます」と、大阪大学の髙倉伸幸教授。
自律神経の一つである交感神経が優位になると、血管は収縮し、心臓をはじめとする体の中心に血液を送ろうとします。しかし、交感神経が優位になり過ぎると、かえって血流が悪くなり、必要な酸素や栄養素が全身に行き渡らなくなります。もう一方の副交感神経が優位になると、体はリラックスして休息状態になり、血管が拡張します。そうすることで、細動脈の先にある毛細血管も緩く広がり、体の末端の細胞にまで酸素や栄養素が届けられます。
「お風呂につかったり、アロマオイルの香りをかぐ、深呼吸するなど、ゆったりと過ごすことは、副交感神経を優位にして、血管を若々しく保つ手助けになります」(髙倉先生)。
自律神経の働きをコントロールすることは、疲労対策にも効果があります。「運動や仕事、家事、眼精疲労、そして心因的なストレス。これら全ての疲れの原因は、実は、脳内にある自律神経の中枢が疲労することです」とは、疲労研究家で大阪市立大学大学院の梶本修身特任教授。
過剰な運動や労働、ストレスによって自律神経に負担がかかると、自律神経の中枢の細胞で活性酸素が大量に発生して抗酸化物質(活性酸素から細胞を守る物質)が不足し、疲労を引き起こします。また、抗酸化物質は、年齢を重ねるほど減少するため「年々、疲れやすくなる」「疲れがとれにくい」などといった症状が起こります。
自律神経を酷使せず、活性酸素を発生させない生活習慣を心がけることは、疲労をためにくい体を作るだけでなく、健康的な血管の維持にも重要です。自律神経と血管を常にベストな状態にして、心身ともに老けない自分になりましょう
※平滑筋とは、筋肉をつくっている筋組織の一つ。消化器や呼吸器、血管などの壁にあり、緊張の保持と収縮を司ります
自律神経は、血管の細動脈まで働きかけます。交感神経が活発過ぎると血流が悪くなり、毛細血管の働きも衰えます。
その結果、全身に酸素や栄養が行き渡らなくなります。
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取材・文/寳田真由美、イラスト/中川原透