悲しくないのに涙があふれて、視界がぼやけちゃう...。「流涙症」をご存じですか?

悲しくないのに涙がたくさん出てつらい...。それは、「流涙症(りゅうるいしょう)」という病気かもしれません。東邦大学医療センター 大森病院眼科教授の堀 裕一先生に、症状や治療法を教えていただきました。

pixta_29506847_S.jpg

「流涙症」は涙の分泌と排出機能のバランスが悪くなって起こる病気です。

目の表面に過剰な涙がたまり、視界がぼやけて、物が見えづらくなります。

特に涙は下まぶたにたまるので、読書など下を見る際に支障を来します。

常に涙でまぶたが濡れているので、目の周りの皮膚が赤くなることもあります。

放置していると、涙囊(下図参照)が感染症を起こす「急性涙囊炎」(鼻の横が急激に腫れ上がる)や、涙小管が炎症を起こす「涙小管炎」(涙点の辺りに腫れや痛みを感じたりする)に至ることもあります。

涙道(涙の通り道)はこうなっている


★正常な状態:涙の分泌と排出機能のバランスが良い
涙腺で分泌された涙は、涙点→涙小管→涙囊→鼻涙管を経て鼻腔へと排出される

2010_P091_01.jpg

涙の役割
・眼球を保護する
・まぶたの動きをよくする
・目の表面に酸素や栄養を届ける
・細菌や紫外線から目を守る
・雑菌を消毒する


涙は「涙腺」で作られ、まばたきのたびに新旧の涙が入れ替わります。

古い涙は涙道を通り鼻から喉へ排出されますが、加齢に伴い涙道内に老廃物が蓄積し、涙の排出がうまくいかなくなると、涙や目やにが逆流して流涙症が起こります(涙道閉塞)。

アレルギー性鼻炎や蓄膿症など鼻の持病がある人に多いのが特徴です。

加齢による白目のたるみ(結膜弛緩症)や眼瞼外反症・内反症、抗がん剤の副作用で涙が流れにくくなることもあります。

ドライアイ、逆さまつげ、角膜炎、結膜炎など目の表面の疾患は涙の分泌を過剰にし、流涙症の原因になります。


★流涙症になると

2010_P091_02.jpg

考えられる原因

涙道閉塞(排水管の詰まり、圧倒的に多い)
結膜弛緩症(白目のたるみ)
眼瞼外反症・内反症・眼瞼下垂
⇒涙の流れが妨げられることで起こる「導涙性流涙」

ドライアイ
逆さまつげ
角膜炎
結膜炎
⇒涙の分泌量が多いために起こる「分泌性流涙」


原因別に適切な対処を。内視鏡で検査が可能に

治療は原因によって異なるので、まず原因を突き止めます。

問診で「鼻の持病があるか」「涙のほかに目やにも出るか」などを聞くほか、角膜や結膜などの傷のチェック、蛍光色素を点眼して涙の量や高さを調べます。

涙道の状況を調べるには「涙道通水試験」が有効です。

涙点から生理食塩水を注入して、喉まで流れるか確認します。

これだけで改善する場合もあります。

炎症や涙の分泌を抑える点眼薬で改善されない場合は、「涙道内視鏡」を使って専門的に検査します。

最新型の涙道内視鏡は先端が0・7mmで、より正確で痛みも軽減しました。

検査と並行して、涙囊洗浄などの処置や、涙管チューブを留置して患部を広げる手術をすることも可能です。

涙道閉塞が強く、炎症や癒着が起こっている場合は「涙囊鼻腔吻合術」を選択します。

鼻の骨の一部を削って涙の通り道を作ります。

全身麻酔で入院が必要な場合があります。

流涙症で失明することはありませんが、生活の質を著しく低下させます。

不快感で苦しんでいる方は我慢せず、早めに眼科を受診してください。

涙道閉塞の手術方法

「涙管チューブ挿入術」が主に行われている。

涙道内視鏡で患部を見ながら、専用の涙管チューブを挿入し涙道を再建する。

2010_P091_03.jpg

・涙道内視鏡を入れる前に、目頭に麻酔薬を注射する
・涙点から涙道内視鏡を挿入し、患部を確認しながらチューブを装着(約30分の手術)
・チューブ挿入後は1~2週間ごとに涙囊洗浄が必要
・1カ月半~3カ月後にチューブをはずす

※涙道外来を行っている眼科は限られています。日本涙道・涙液学会のホームページで確認できます。まずはお近くの眼科にご相談ください。

【まとめ】

★主な症状

  • 涙があふれて視界がぼやける
  • 涙でめがねのレンズがくもる
  • 目やにがたまりやすい
  • 目の周りの皮膚がただれる

★主な治療法と予防法

  • 点眼薬による薬物治療。涙の分泌を抑える点眼薬もある
  • 原因(逆さまつげ、涙道閉塞など)を取り除く手術療法
  • まぶたの周りを清潔にする

【記事リスト】「私たち世代の持病対策最前線」他の記事はこちら!

取材・文・構成/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子

 

<教えてくれた人>
東邦大学医療センター 大森病院眼科教授
堀 裕一(ほり・ゆういち)先生
1995年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学系研究科を経て、2009年より東邦大学医学部に勤務。専門分野は角膜、目の表面の疾患など。

この記事は『毎日が発見』2020年10月号に掲載の情報です。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP