病院で薬を出してもらえず不安...。なぜ? 医師に聞いた「薬を出さない方がいいケース」とは

「自分が望んだ検査」や「ほしい薬」の処方をしてもらえず、お医者さんに満足できない...実はそれ、あなたの「病院のかかり方」に問題があるのかもしれません。そこで、多彩な情報発信をしている現役医師・山本健人さんの著書『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』(KADOKAWA)より、「知っておくと、もっと上手に病院を利用できる知識」をご紹介。医師&病院の「正しい活用術」を、ぜひ手に入れてください。

pixta_39251012_S.jpg


「薬が欲しくて病院に行ったのに何ももらえませんでした。具合が悪いのに薬がないと不安です......」

【答え】
① 症状の自然な経過を見る場合など、薬を出さない方がいいケースがあります
② 薬がもらえず不安なときは、その理由を医者に聞いてみましょう


「治療=薬を出す」ではない

「病院に行くこと」と「薬をもらうこと」をほとんど同義だととらえている人は多いと思います。

何かつらい症状があり、それを治したいと思ったら、飲み薬や注射などの投薬を一番に思い浮かべるからでしょう。

「薬を飲んだら楽になった」「薬で痛みがおさまった」という成功体験があるので、「薬を使うことが最も大事だ」と考えるのかもしれません。

確かに「この病気はこの薬で治る」ということが明確にわかる場合もあるのですが、実は「薬を使わない方がいい」と思われるケースも多くあります。

たとえば、正確な診断のために病状の自然な変化を確認したい、というケースです。

このケースで、患者さんが希望するからといって薬を使ってしまったら、その後に病状が変化したとき、薬が作用した結果として変化したのか、病状そのものが改善、あるいは悪化したのかがわからなくなってしまうのです。

一例を挙げてみましょう。

患者さんが吐き気と下痢の症状で病院に行き、医者に「抗生物質を処方してほしい」と希望したとします。

抗生物質は正確には「抗菌薬」といい、膨大な種類があります。

それぞれ、どんな種類の細菌に効くかが異なります。

よって医者が抗菌薬を処方するときは、「どんな細菌による感染症が起こっているか」を予測し、適切な薬を選ばなければなりません。

しかしその前に、「そもそも抗菌薬が必要ない場合は抗菌薬を使ってはならない」ということを理解しておく必要があります。

吐き気や嘔吐、下痢を伴う胃腸炎はウイルスが原因のことが多く、ウイルス性胃腸炎に抗菌薬は無効です(※)。

※細菌性・ウイルス性にかかわらず、そもそも感染性の胃腸炎自体に抗菌薬は不要であることが多い。

抗菌薬は細菌をやっつける薬で、細菌とウイルスはまったく別の微生物だからです。

そして何より大きな問題は、抗菌薬の副作用で下痢が起こることです。

ウイルス性胃腸炎はほとんどが自然に治りますが、抗菌薬を使ってしまうと、もし下痢が長引いたときに「胃腸炎が悪化しているのか、胃腸炎は自然に治ったのに抗菌薬の副作用で下痢が続いているのか」の見分けがつかなくなります。

「念のため」と言って必要のない薬を使ってしまうと、病気の悪化に気づけないおそれがあるのです。

薬で症状が変化してしまうことに注意する

他にも、医者が薬を出さないケースの中には、患者さんが「まだ診断がつかない段階」にいる場合があります。

このケースでは、病状の自然な経過を見ることで正確な診断に近づく可能性があるため、医者は「薬を出さない方がいい」と考えます。

たとえば、病気の中には、A・B・Cという3つの条件がそろったら正確な診断ができる、というタイプのものがあります。

この場合、Aの条件だけが現れている患者さんに、1週間経ってB、Cの条件が現れたら疑いが確信に変わる、もし現れなかったら別の病気の可能性を考える、というような事態が起こります。

200830-3.jpg

こうしたケースでは、正確な診断のために薬による影響を避けなければなりません。

一定の期間を置いて再度来院してもらい、病状の自然な経過を見て、病気の全体像を把握してから適切な薬を選ぶ必要があるのです。

なかには、「病気が悪くなるのを待っているだけではないか」と不安に思う患者さんもいるでしょう。

しかし、逆に時間が経過するだけで自然によくなることもあります。

これは、「無駄な治療をしなくて済んだ」と喜ぶべきパターンです。

こうした可能性も考慮し、あくまで病状の自然な変化を見ることが大事なのです。

もちろん症状がつらいときに、診断に影響を与えない範囲で症状を抑える対症療法を提供してもらうことは大切です。

「今のつらい症状を抑える方法はありませんか?」と相談してみるとよいでしょう。

当然ながら、「薬を使ってはいけない=症状をひたすら我慢しないといけない」ではないことにご注意ください。

【まとめ】『医者と病院をうまく使い倒す34の心得』記事リスト

71+bQmpLwaL.jpg

医師や医療行為への「よくある疑問や不安」を、Q&A方式でわかりやすく解説! 「医学のスペシャリスト」を上手に利用するための「34のエッセンス」が詰まっています

 

山本健人(やまもと・たけひと)
京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。「外科医けいゆう」のペンネームで運営する医療情報サイトが好評で、Twitterのフォロワー数は約7万人を数える。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎新書)、『もう迷わない! 外科医けいゆう先生が贈る初期研修の知恵』(シービーアール)、『もったいない患者対応』(じほう)がある。

shoei.jpg

『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』

(山本健人/KADOKAWA)

病気で悩まないためには、何でも医師に「お任せ」ではなく、私たち患者自身も「自分を守るための知識」を身につける必要がありますよね。医師や医療行為に対してよく感じる疑問や不安に一つ一つ答える形式で、上手な「病院の利用法」についてわかりやすくレクチャーしてくれます。令和版「医師のトリセツ」とも言える、必携の一冊です!

※この記事は『医者と病院をうまく使い倒す34の心得 人生100年時代に自分を守る上手な治療の受け方』(山本健人/KADOKAWA)からの抜粋です。
PAGE TOP