生理痛がひどくて動けない、婦人科疾患が治らない...こうした悩みや不安は、なかなか人には聞けないものだと思います。そこで、こうした多くの相談に答え、5万人の膣を診てきた婦人科医・駒形依子さんの著書『膣の女子力 女医が教える「人には聞けない不調」の治し方』(KADOKAWA)より、人には聞けない不調を解決するカギとなる「こまがた式セルフケア」についてご紹介します。
子宮内膜症は自分で治せる!
生理痛や過多月経で受診する患者さんに多いのが、「子宮内膜症」。
子宮内膜症とは、子宮の内側を覆っている内膜組織が、毎月、子宮の内側以外の場所で増えて出血し炎症を起こすことで、強い痛みが生じる病気です。
子宮内膜は、生理周期に合わせてエストロゲンの影響を受けるため、子宮の内側以外の場所で生理のたびに炎症が繰り返され、臓器が癒着して症状が悪化します。
子宮内膜症はできる場所によって、次の4つに分けられます。
①チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症)
→卵巣に嚢胞状の腫瘍ができる。古い血液がたまり茶色くなって、見た目がチョコレートに似ていることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれる
②子宮腺筋症
→子宮の筋層内に霜降り状に子宮内膜組織がまぎれ込む
③骨盤子宮内膜症
→1cm未満の子宮内膜組織が、子宮の外側、卵管、卵巣、腸など骨盤内の臓器の表面に飛び散る
④異所性子宮内膜症
→骨盤内ではなく、肺や大腸、鼠径リンパ節などに子宮内膜組織が飛び散る
【子宮内膜症の種類】
①のチョコレート嚢胞は、古い血液がたまることで卵巣に嚢胞状の腫瘍ができる病気。
子宮内膜症で最も多い症状で、見た目がチョコレートに似ていることからついた病名です。
大きいから痛みがひどい、小さいから痛みが少ないというわけではなく、なかには、痛みがまったくない人もいます。
②の子宮腺筋症の人は、子宮が大きめでいびつな形をしています。
なぜなら、生理のたびに内膜が子宮の筋肉の中で厚くなって出血し、外に出ることができないので、子宮が腫れている状態になるからです。
腫れる場所によって、その部分だけふくらむので、いびつな形になるのです。
子宮腺筋症は、とにかく痛いです。
毎月、筋肉の中で内出血、つまり、あざができている状態。
あざは押したら痛いですよね。
それと同様に、内出血した筋肉が収縮して出血を止めようとあざを圧迫するので、激痛が起こるのです。
治療でよくおこなわれるのは、ピルの内服。
ホルモンの量を一定にすることで内膜が厚くなるのを抑制し、出血や痛みを抑えるのが目的です。
もう1つが、閉経療法です。
エストロゲンをなくすことで内膜を厚くしないようにします。
③の骨盤子宮内膜症の場合は、生理のたびに飛び散った子宮内膜組織が厚くなり、出血して炎症を繰り返すため、下腹部痛や腰痛、排便痛、性交痛などが起こります。
進行すると、生理以外のときでも腰痛や下腹部痛が起こったり、卵巣や卵管、腸などが癒着することで排便痛や牽引痛(便が通るときに腸が引っぱられる感じ)、性交痛などの原因になったりすることも。
炎症を起こす病変が小さく、エコーやMRI検査では映らないので、生理のたびに下腹部痛や腰痛がある場合は、「骨盤子宮内膜症の疑いがある」として、低用量ピルや黄体ホルモン製剤を服用してもらい、それで治まれば骨盤子宮内膜症と診断されることがあります。
④の異所性子宮内膜症は、内膜組織が定着する場所によって症状が異なります。
肺に飛んでいれば、生理のたびに肺で出血し、肺の組織が破れて気胸(肺から空気が漏れて胸腔にたまる症状)を起こすこともありますし、鼠径部にあれば生理のたびに鼠径部が腫れ上がり、歩けなくなることもあります。
大腸にあれば、生理のたびに激痛とともに下血することもありますが、わずかな下血の場合は、大腸からの下血かどうかが判断できないため、重い生理痛と思って見過ごす人もいるでしょう。
大腸カメラで見つかることもあります。
ほかにも、肝臓、小腸、へそ、尿管などに子宮内膜組織が飛んでいる事例もあるため、まさか子宮内膜症とは思わずに、別の病気だと思っている人も多いかもしれません。
これらの子宮内膜症は、自分が受精卵だった分裂時の問題でなければ、「冷え」や「血流障害」が大きな原因です。
膣・子宮の冷えによる血流障害にともない、いらなくなった組織の吸収・排泄機能が低下することで、内膜組織が定着し、生理のたびに炎症を引き起こして、生理痛や過多月経を起こします。
まずは、膣や骨盤内を温めて血流を整えること、体を循環する血液を増やすこと、血の質をよくすることが大事です。
【まとめ読み】人には聞けない悩みがある人に。『膣の女子力』記事リスト
生理や婦人科疾患などの悩みを解決するカギや、セルフケアの方法について、5章に渡ってわかりやすく解説