「死ぬまで好きなものを食べ続けたい!」なら、鍛えるべきは「口の中」。そこで、丈夫な歯と歯ぐきを維持できるトレーニングを考案した歯科医師・新谷悟さんの著書『歯と歯ぐきを強くする 噛みトレ』(アスコム)から、「口と歯を守る」ためのヒントをご紹介します。
「唾液力」「咀嚼力」「飲み込み力」加齢とともに衰える3つの力
健康のためには、栄養のある食べものをとることが大事といわれていますが、ただ食べるだけでなく、食べたものを栄養としてしっかり吸収する口の機能も必要です。
そこで大切になるのが、「唾液力」「咀嚼力」「飲み込み力」です。
「唾液力」は、十分な唾液量を分泌する力です。
唾液は、口に入ってきた食べものを消化しやすいようにするだけでなく、口の中に入ってきた細菌を殺菌したり、口の中をきれいにしたり、口の健康を守るために不可欠なものです。
特に、歯周病予防に唾液は、とても大切です。
歯周病を予防することが、歯と歯ぐきを強くすることにつながり、それは、食べものを栄養としてしっかり吸収するためにも重要になってきます。
もちろん歯みがきを丁寧にすることも大切ですが、唾液がたっぷり出る体にすることが、歯周病から守ることにつながります。
「咀嚼力」は、歯で食べものを噛み砕く力です。
それだけでなく、細かく砕いた食べものを唾液と混ぜ合わせ、胃で消化しやすいかたまりにするまでを、「咀嚼する」といいます。
もし、咀嚼力が低下している場合は、ふだんの食事のときに「何だか噛みにくいなあ」と思うことがあるはずです。
さらにいえば、咀嚼すると、脳内の血流が増え、神経活動が活発になります。
この力が弱まると脳の血流が減ってしまうのです。
それが、認知症などの原因になります。
「飲み込み力」は、食べものを食道に運ぶ力です。
難しい言葉を使うと、「嚥下」といいます。
みなさんは、ご飯を食べているときや、飲みものを飲んでいるときにむせたことはありませんか。
それは、食道に入るはずの食べものや飲みものが、間違って気管に入ったときの生理的な反応です。
通常は、食べものや飲みものを飲み込むときは、喉頭付近の筋肉がのどを2~3センチせり上げて、気管にふたをするので、むせることはありません。
つまり、むせるということは「飲み込み力」が衰えている可能性があるということです。
唾液力、咀嚼力、飲み込み力、この3つの力は、維持する努力をしていなければ加齢とともにどんどん衰えます。
しかし、みなさんはこう思っているはずです。
「普通にご飯は食べているし、飲み込める。口の中は多少渇きやすくなったかもしれないけれど、唾液が出ないということはない」
もしかしたら、今のところ、日常生活には困っていないかもしれませんが、実は衰えていることに気づいていないだけなのです。
そして、高齢になると、その衰えが「歯がなくなった」「食べられない」といった具合に、実感してくるのです。
唾液を分泌したり、咀嚼したり、飲み込んだりする動作をつくるのは、口やあご周りにある筋肉です。
足や腕の筋肉と同じように、口やあご周りの筋肉も使わなければ細くなるし、かたくなります。
口やあご周りの筋肉を使う機会を考えてみると、食べるか、話すか、ときどき歌うかくらいではないでしょうか。
欧米人と比べると感情表現が苦手な日本人は、オーバーアクションで笑うことも、喜んだりすることも少ないと思います。
さらに、最近の日本人の食生活を見てください。
口の中でとろけるような料理ばかり。
ほとんど噛む必要がなくなっています。
口やあご周りの筋肉を使うことが少なくなれば、衰えるのは当たり前です。
そうなれば、唾液力も、咀嚼力も、飲み込み力も衰えます。
そして気づいたら、体全体が衰えていく初期段階といわれる「オーラルフレイル」という、口の機能(口腔機能)全般が衰えている状態になってしまうのです。
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