ご存じですか?米国立がん研究所が発表「がんの予防に最も効果的な食品」とは

「がん予防にいい食材は?」「食べてすぐ寝ると太る?」テレビやインターネットにあふれかえる情報、一体どれを信じればいいのかわからない・・・。そこで、ハーバード大学や米国国家機関などの統計データを基に、本当に効く健康法をまとめた『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)から、正しい健康管理術を連載形式でお届け。クイズ形式なので、ちょっとした話のネタにも使えます。

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がんの予防にもっとも効果的な食品は?


Q:1990年にアメリカ国立がん研究所(NCI)が発表したがん予防の研究で、がんの予防にもっとも効果的とされた食品は次のうちどれか?

A.にんにく
B.トマト
C.レモン


答え:A にんにく

野菜の中でも、好き嫌いの分かれる食材のひとつである、にんにく。その強烈なにおいから、「嫌いではないけれど口臭が気になるので食べない」という人もいると思います。

しかしそれはとてももったいないことです。なぜならにんにくは、植物性食品の中でもっとも「がん予防」に効果があることがわかっているからです。

がんは、日本人の半数がかかる国民病。1981年以来、死因のトップであり続け、近い将来3人に2人はがんになるとも言われており、現在も3人に1人はがんで亡くなっています。もし食のレベルでがんをある程度予防できるなら、私たちの寿命はさらに大きく延びるはずです。

がんと食生活の関連を調べた研究として有名なのが、アメリカの国立がん研究所(NCI)が発表した「デザイナーフーズ・ピラミッド」です。野菜や果物、穀類、海藻類などの植物性食品に含まれている成分を調べ、その中でがん予防効果が期待できるものをリストアップして、効果が高いと考えられる順にピラミッド型に並べました。

その頂点に君臨する食材が、にんにくなのです。

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少しわき道に逸れますが、なぜアメリカでこのような研究が行われたかについて、簡単に触れておきましょう。

1960年代後半のアメリカでは、生活習慣病の増大で国民の医療費が膨れ上がり、「心臓病の治療費だけでアメリカ経済がパンクしかねない」と言われるほどの状態になっていました。

当時のニクソン大統領は、生活習慣病の治療技術開発に対して予算を投入しましたが、はかばかしい成果は上がらず、次第に治療よりも予防を重視した対策に重きが置かれるようになりました。

1977年には、アメリカ人の食生活に対し「生活習慣病は肉食中心の偏った食生活がもたらしたものであり、薬では治らない」と断じた「マクガバン・レポート」が社会に衝撃を与えます。

それ以来アメリカでは、食事を通じて病気を予防する研究が盛んにおこなわれるようになりました。そうした経緯から生まれたひとつの成果が、デザイナーフーズ・ピラミッドというわけです。

そこで、がん予防の王様とされる、にんにくの話に戻りましょう。

前述の研究以外にも、にんにくががん予防に良いというエビデンスは世界中で多数得られています。

もちろん一口に「がん」と言っても、がん化する部位はさまざまで、その種類によっても効果のある食べ物は異なるといいます。ところがにんにくの場合には、実に多くの種類のがんに対して予防効果を発揮することがわかっているのです。

ヨーロッパでは、10カ国の男女を対象として、がんと栄養摂取の効果を調べる実験が行われました。その結果、にんにくと玉ねぎの摂取量が多いほど大腸がんのリスクが下がることがわかっています。

フランスで実施された試験では、にんにく摂取量の増加と乳がんリスクの減少との間に有意な関連が指摘されています。とくに食物繊維とにんにくおよび玉ねぎの摂取量が多いほど、乳がんリスクは減少していました。

アメリカで行われた「アイオワ州女性健康調査」では、高齢女性を対象として、食事や体脂肪の分布およびその他の危険因子とがんの発症率との関連性が、大規模に調査されました。

その結果、にんにくの摂取量と結腸がんリスクの間に強い相関が認められ、もっともにんにくを食べていた女性群では、もっとも少なかった女性群と比べ、50%もリスクが減少していました。

また、サンフランシスコのベイエリアで行われた試験では、にんにくを大量に摂取した人は、少量しか摂らなかった人に比べ、前立腺がんのリスクが54%減少したという結果が出ています。

中国でも、にんにくの摂取量とがんリスクに関する研究がいくつか実施されています。それによると、にんにくが食道がんおよび胃がんのリスクを減少させる可能性が強く、前立腺がんのリスクも約50%減少すると報告されています。

なぜこうした効能があるのかといえば、いくつもの要因が考えられています。

まず、にんにくに含まれる硫黄化合物が、発がん性物質を代謝・解毒することで無害化し、体外に排出する働きがあるということ。特に、肝臓障害や動脈硬化の原因ともなる過酸化脂質を代謝し、減少させる効果があることが実験でわかっています。

次に、がん化した細胞を死滅させることで、がん細胞の増殖を抑えること。アリルスルフィド類という成分に、この効果があることが確認されています。

そして、免疫機能を強化し、発がん性物質やがん細胞の除去を促進すること。硫黄化合物が、免疫力を強化する働きがあるとされています。

以上のような複合的な効果により、にんにくはがん予防食材の頂点に君臨しているのです。

その他にも、にんにくには、血液の循環をよくする、消化を促進して胃腸を整える、疲労回復や滋養強壮効果など、さまざまな効能があるといわれています。

特に疲労回復の効能につながる要素のひとつとして挙げられるのが、「ビタミンB1」との相乗効果です。

ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変換するための潤滑油のようなもの。エネルギーを生産し、脳のブドウ糖の代謝も促すので、肉体的にも精神的にも元気の素となる存在です。

ただ、ビタミンB1はもっとも取り入れにくい栄養素のひとつです。

そもそもほとんどのビタミンは体内で作ることはできないため、食べ物から摂るしかないのですが、ビタミンB1は水溶性で水に溶けだしやすく、また熱に弱い性質もあるため、調理の過程でどんどん失われてしまいます。

また、せっかく体内に入っても糖分を摂ると消費されていきますから、ジュースやお菓子など甘いものを食べればやはり失われていきます。さらに一定量以上はすべて吸収されずに体外に排出されるため、体内に蓄えることができないので、毎日摂取しなければならないのです。

このようなやっかいな特性をもったビタミンB1ですが、にんにくと一緒に摂ることで、性質が一変します。

にんにく独自の成分である「アリシン」は、ビタミンB1と結合することで「アリチアミン」という物質に変わります。アリチアミンは水や熱に強く、腸からの吸収率もいいのでスムーズに体内に取り込むことができ、しかも血液中にある程度貯蔵することができます。こうしたことから、にんにくとビタミンB1を一緒に摂取することで、相乗効果が見込めるのです。

ビタミンB1は、豚肉などに多く含まれますから、一緒に食べるよう心掛けると、疲労に強い体作りに一役かってくれるかもしれません。

ちなみにアリシンは、あの強烈なにおいの元となる成分です。「良薬口に苦し」ならぬ「口に臭し」といったところでしょうか。

このように、にんにくは日々の健康をサポートしてくれる強い味方といえますが、いったいどれだけの量を摂れば効果が期待できるのか。

そのはっきりとした目安は明らかになっていないのですが、世界保健機構(WHO)による成人の一般的な健康促進ガイドラインでは、生にんにくならおおよそ一片とされています。

生をすりおろして食べるのがもっとも効果的ですが、口臭などの観点からあまり現実的とはいえませんので、加熱して料理に使ったりしながら、日常的に食べるようにするといいでしょう。

【まとめ】にんにくを習慣的に食べれば、いくつものがんの予防になる!

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060-syoei-nagaikinotoukei.jpg確実なデータを基に、「食事」「生活習慣」「運動」「メンタル」の4分野から29の健康情報を紹介。情報の基となる大学や機関名も記載されています

 

川田浩志(かわた・ひろし)

1965年、神奈川県生まれ。東海大学医学部内科学系血液腫瘍内科教授、医学博士。米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、2015年4月より現職。最先端の血液内科診療に従事しながら、アンチエイジング医学の普及にも注力する。

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『長生きの統計学』

(川田浩志/文響社)

「それ、本当!?」というような科学的根拠のないさまざまな健康情報を耳にする昨今。そんな時代に信頼すべきは、エビデンスのある「データ」です。本書で示されているのは、ハーバード大学やウィーン医科大学といった世界の名だたる大学や、各国の国家機関などの統計データをまとめた「事実」のみ。健康のための統計本です。

※この記事は『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)からの抜粋です。

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