免疫力を高め、スタミナ食材として昔から食べられてきた「にんにく」。実は、驚くほど体によい栄養素を含んでいます。いったいどんな効果があるのでしょうか?
料理研究家で管理栄養士の村上祥子先生に教えてもらいました。
にんにくがもつ成分として、とくに健康に貢献してくれるのが、「アリシン」という成分。あのにんにく特有のにおいの成分です。強力な抗菌、殺菌作用、血液をサラサラにする働き、代謝に欠かせないビタミンB1の吸収を良くする働きのほか、そしてさまざまな病気を引き起こす活性酸素を除去する力もあります。
例えば、風邪の際、コップ1杯のぬるま湯に、にんにくのすりおろし小さじ5分の1ほど加えてうがいをすると、のどの腫れが収まります。これは、にんにくのアリシンの抗菌効果によるものです。
毎日、少しずつにんにくを摂ることは、健康を維持し、疲れない体づくりに役立ってくれます。
◎おいしい!ヘルシー! にんにくの効果
1 免疫力向上
自然治癒力を高めて風邪など感染症から守る!
免疫機能を調整してアレルギー症状を改善
にんにくに含まれるイオウ化合物のアリインが変化したアリシンは、免疫力を強力にアップ。ウイルスを食べる免疫細胞の一つ、ナチュラルキラー細胞を活性化させます。そして自然治癒力を高め、ウイルスを攻撃する抗体を体内でつくらせる"獲得免疫力"を向上させる働きが大きいです。インフルエンザなど、ウイルス感染症から体を守る力が高まります。
2 がん予防
にんにくはアメリカ国立がん研究所も認める
がん予防効果を有する健康食材
にんにくのにおい成分が変化したスルフィド類はナチュラルキラー細胞を活性化し、がんの発生を予防する作用があるといわれています。にんにくを加熱したときにできるアホエンにも、同じくがんを予防するパワーがあります。におい成分そのものであるアリシンは、がんを誘発する活性酸素を除去する酵素の量を増加させ、がん予防へと導きます。
こうしたにんにくのパワーは、アメリカ国立がん研究所が発表した、がんを予防する食材の中で「あらゆる食品中、にんにくが最もがん予防に効果的」とされているほどです。
3 高血圧&糖尿病改善
善玉コレステロールを増やす!
血液の流れを良くして血栓ができるのを予防
にんにくに含まれるスコルジニンは、血中の悪玉コレステロールを抑えて善玉コレステロールを増やすとともに、血管を拡張させて血液を固める血小板の力を抑え、血栓や高血圧を予防します。また、アリインが変化したアホエンにも、血栓を予防する働きがあります。
4 体力増強・疲労回復
ビタミンB1が吸収されやすくなり、疲れにくい体づくりに導く
体力増強・疲労回復には、効率の良いエネルギー補給が重要です。食べたものをエネルギーに換えていくにはビタミンB1が欠かせませんが、ビタミンB1は水溶性のため、吸収率が低いのが弱点。
そこで活躍するのが、にんにくの代表的な健康成分・アリシンです。
ビタミンB1はにんにくのアリシンと出合うと働きが変わります。油に溶ける性質(脂溶性)となるので腸から吸収されやすくなり、エネルギー補給が効率良く行われるようになります。ビタミンB1が十分に足りていて必要量があれば、元気ではつらつとした体づくりに一役買います。
5 アンチエイジング
アリシンが細胞の抗酸化力を高める
約60兆もの細胞からつくられている私たちの体。アンチエイジングとは、この細胞一つ一つを老化から守り、活性化させることに他なりません。アリシンには、人間の体が本来持っている抗酸化力(老化の元凶となる酸化を防ぐ力)を活性化させる働きがあります。
6 血行促進
交感神経を刺激して末梢の血管を拡張し、
血行を良くする。冷えも改善
にんにくのジアリルジスルフィドやアリシンがビタミンB1と結びついてできる「アリチアミン」は、交感神経の末端から出る神経伝達物質「ノルアドレナリン」の分泌を高めることが分かっています。ノルアドレナリンの血中濃度が上がると体内の余分なエネルギーを燃焼し、その結果としてエネルギー代謝が高まります。体脂肪の燃焼も促進するので、ダイエット効果も期待できるのです。
このノルアドレナリンの分泌は非常に素早く、食べてわずか数分で分泌されるというから驚きです。これこそが、にんにく料理を食べたとたん、体がぽかぽかと温まる理由です。
7 美肌効果
アリチアミンが肌の代謝も促進して、肌トラブルや肌の老化を防ぐ
にんにくのにおい成分、アリシンは、ビタミンB1と結合すると「アリチアミン」という物質になります。この物質は体そのものを元気にさせ、新陳代謝を促進させるので、結果として肌の質も高めてつるつる、しっとりの美肌づくりをサポートする働きがあります。
次の記事「酢と一緒に摂れば代謝向上! 酢にんにくの作り方/にんにくで毎日元気(2)」はこちら。
取材・文/石井美佐 撮影/中野正景
村上祥子(むらかみ・さちこ)さん
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与する。同大学内の「村上祥子料理研究資料文庫」では50万点の資料が一般公開されている。