「休日の寝だめ」ができなくなる40代。日中の強い眠気は睡眠不足の証拠です/眠りの新常識

pixta_29778999_S.jpg成人の約5分の1が「不眠」と言われる現代。市場には「快眠」のための情報やグッズが溢れています。しかし実は睡眠に関しては多くの誤解や不正確な情報が氾濫しているのが現実です。精神神経学・睡眠学・時間生物学の第一人者が、中高年男女のための「快眠法」を伝授。本当にぐっすり眠りたい現代人のための「睡眠ガイド」です。

※この記事は書籍『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』(KADOKAWA)からの抜粋です。

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【実例:男性40代の睡眠のケース

仕事で疲れ、帰宅が遅くなった日には、疲労回復のためすぐに寝床に就くが、目が冴えたままでなかなか寝つけない。昔はバタンキューで眠れていたのに。働き盛りを自認しているのに、なんとなく睡眠不足のような気がする。疲れが残っているような気がして心配だ。

若いときのように、休日に沢山眠ったという充実感が減った。新しい週が始まっても心身の疲れが残っているのでは......と心配してしまう。休日には長く眠っていよう、そうすれば、休日にもっと休息でき、仕事で無理ができるようになると思うが、うまくいかない。

40代は睡眠不足に悩まされがち

●原因・背景
若い年代では、休日には起床時刻が平日より2~3時間程度遅くなります。平日の睡眠不足を解消するためと考えられます。仕事や生活が充実していて忙しい人では、平日は睡眠不足の状態で過ごし、休日には昼過ぎまで眠っている人もいます。

しかし、40代になると昼過ぎまで眠っているのはなかなか難しくなってきます。夜間に実際に眠ることのできる時間は、年齢を重ねるにつれて徐々に減っていきます。夜間の睡眠時間は10代前半までは8時間以上、25歳で約7時間、その後20年経った45歳になると約6.5時間と短くなります。さらに20年経って65歳になると約6時間になります。年をとると長く眠るのが下手になってくるのです。

1週間の睡眠時間で見ると、20代、30代、40代の変化は、1日平均で30分程度、7日間で3時間半くらいですが、平日と休日のバランスはもっと大きく変わるようです。40代になると、休日もふだん仕事へ行くために起きる時刻に目が覚めてしまうようになり、睡眠不足でも若い人のように昼まで眠っていることが困難になります。このため、平日の無理を土日の2日間の休みでは解消できないことが増えてくるのです。

休日に、遅くまで眠っていようと思っても、いつもの時刻になると起きてしまうのは、基本的には体内時計の影響が起床時刻に、より強く反映されるようになるからです。意思の力でこれを変えるのは困難です。

遅くまでフルに仕事をしていて、就床するとバタンキューで眠り、熟睡して朝はスッキリ目覚めるというような生活を理想とする人もいます。しかし、これは人間の脳の仕組みや体内時計のはたらきを考えると、無理な要求です。

私たちは、体内時計の仕組みで身体全体がリラックスして休息態勢になって初めて、安定して脳を休ませることができる、つまり睡眠がとれるようにできています。脳がフルに活動していた状態から、急速に休んだ状態になることは困難なのです。

眠るためにと寝酒を始めたり、寝酒の量を増やしたりすると、逆効果になることが多いようです。いびきがひどくなったり、アルコールが完全に分解される就寝後1~2時間で夜中に目が覚めてしまったりするようなことが起きやすくなります。

この年代になると、睡眠時無呼吸症候群の人が増えてくることも、睡眠がうまくとれないという訴えが増える原因となっています。睡眠中に呼吸が短時間止まったり、すぐに再開したりするために安定した深い眠りが得られなくなる病気です。眠っても休息感が得られず、昼間の強い眠気をもたらします。睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の引き金に、あるいは悪化させる原因になりますが、きちんと治療しておけば、こうした病気を防止できます。

●対策のポイント
自分の睡眠時間が足りているかどうかを判断するポイントは、日中の眠気です。日中に仕事や何かの活動に支障をきたす程度かどうかを自分でチェックしてみましょう。支障がない程度であれば、ふだんの睡眠時間は足りていると考えてよいでしょう。午後の早い時刻に、ちょっと眠たくなるのは生理的なもので、必ずしも睡眠不足によるものとは考えなくてよいでしょう。

睡眠スケジュールとしては、週末に沢山眠って睡眠不足を補うという考えを変えて、少しずつ平日と休日の差を少なくしていくことが重要です。いわゆる若者の年代を過ぎると、身体がだんだんと体内時計に沿ってはたらくようになってくるため、睡眠スケジュールもこれに合わせていく必要があるのです。

日中に強い眠気に襲われるようなことがあれば、睡眠不足と考えてください。睡眠不足が累積するのを睡眠負債と呼ぶことがありますが、40代になるとこれを解消するのに何日かかかることがあるのです。パワーナップなどといって、午後に昼寝を勧める考え方もありますが、普通に生活しているのに午後に1時間以上の昼寝ができるようなら、単なる睡眠不足です。

眠気がある場合には睡眠時無呼吸症候群にも注意してください。

 

次の記事「昼寝は睡眠不足解消に効く! 上手な午睡で心身の健康を維持しよう/眠りの新常識(2)」はこちら。

 

内山 真(うちやま まこと)

1980年、東北大学医学部卒業、東京医科歯科大学精神神経科研修医。91年、現・国立精神・神経医療研究センター室長、 92~93年、ドイツ・ヘファタ神経学病院の睡眠障害研究施設に留学、同センタ一部長を経て、2006年より日本大学医学部精神医学系主任教授。著書に、「睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識」(KADOKAWA)、「名医が教える不眠症に打ち克つ本」(アーク出版)、「睡眠のはなし」(中公新書)、「睡眠障害の対応と治療ガイドライン第2版」(じほう)、『別冊NHK きょうの健康 睡眠の病気」」(NHK出版)など多数。NHK 「きょうの健康」 をはじめ、メディアヘの出演も多い。日本睡眠学会理事長、日本臨床神経生理学会理事、日本時間生物学会理事、日本女性心身医学会監事、日本精神神経学会代議員など。


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『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』

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この記事は『睡眠学の権威が解き明かす 眠りの新常識』からの抜粋です
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