知っておきたいシニア世代の「貧血」2つの分類

猛暑が続くと体がだるく、食欲低下といったことが起こりがちです。そんな症状の原因として「貧血」が隠れているのをご存じでしょうか。そこで、東京都健康長寿医療センター血液内科部長、宮腰重三郎先生に、「鉄欠乏性貧血」と、シニア世代の貧血の「2つの分類」についてお聞きしました。

知っておきたいシニア世代の「貧血」2つの分類  pixta_35470487_S.jpg年を重ねると胃腸などの機能の衰えで「お肉はあまり食べたくない」といったことが珍しくありません。肉類や卵には鉄分が多く含まれるため、それらを控えていると栄養素としての鉄分が不足しがちです。結果として起こるのが鉄欠乏性貧血です。

「偏った食事以外に、胃潰瘍での出血、あるいは血液をサラサラにする狭心症の薬で血管から微量に出血するなど、病気や服用している薬の影響でも、貧血になります。何が原因なのかを知り、正しく対処することが重要といえます」と宮腰先生。

鉄が不足すると、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンがうまく作られなくなります。一方、出血するとヘモグロビンそのものが失われ減少します。酸素を運ぶ成分の減少が貧血の原因になるのです。ですが、シニア世代の貧血の症状は、持病に隠れて明確ではなくゆっくりと進行するため、専門医以外の医師では診断が難しいケースがあります。健康診断で1dLあたりのヘモグロビン値が女性の場合12g未満、男性は13g未満、65歳以上の人は11g未満の低い値が出たときには要注意です。貧血を疑いましょう。

「鉄以外に、ビタミンB12や葉酸、銅の不足も貧血につながります。ビタミンB12不足になると味覚障害が起こって食欲が低下します。気力も失われ、うつ病にも見えるため、不必要な薬が処方されることもあります」

■シニア世代の「貧血」は大きく分けると二つに分類できます。

1.「赤血球を作るために必要な材料が不足している」ことによる貧血

●鉄欠乏性貧血
鉄分摂取量の不足(偏食や不規則な食事、外食過多、無理なダイエットなどが原因で、鉄分が不足する)。出血による鉄分の不足(痔、子宮筋腫や子宮内膜症、消化性潰瘍、がんなどによって出血が起こる)。
そのほかに
●ビタミンB12欠乏性貧血
●葉酸欠乏性貧血 
●銅欠乏性貧血

2.「材料の不足はないが、造血が十分に行われない」貧血

●骨髄機能が正常でないことによる貧血
骨髄異形成症候群、白血病、再生不良性貧血、多発性骨髄腫など。

●骨髄機能が正常であるが、血液をうまく作ることができないことによる貧血
何らかの基礎疾患(感染症、悪性腫瘍、膠原病、慢性腎不全、肝疾患、内分泌疾患など)が原因となり発症。これを二次性貧血という。

上記「1」のタイプは欠乏している栄養素を体内に補うことで回復、改善します。一方、「2」のタイプは血液専門医に紹介してもらい、精密検査を受けることが必要となります。


■高齢者貧血の原因
(合併する基礎疾患がある場合)

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最も多い原因は、胃がんや大腸がんなど悪性腫瘍による炎症や出血です。胃潰瘍などの良性の病気は第3位。肺炎や腎盂腎炎などの感染症も、炎症が続くことで貧血の原因になります。

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取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

宮腰重三郎(みやこし・しげさぶろう)先生

東京都健康長寿医療センター血液内科部長。1959年新潟県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒。虎の門病院血液科などを経て2006年東京都老人医療センター血液科医長、2009年より現職。高齢者の貧血に詳しく血液腫瘍の診断・治療が専門。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

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