「サルコペニア肥満」という言葉を知っていますか? シニア世代にとっては、通常の肥満やメタボリックシンドロームよりも気を付けたい症状です。日本ダイエットスペシャリスト協会の理事長を務める永田孝行先生に、その特徴や予防法を教えてもらいました。
筋肉量の減少+体脂肪の増加。標準体形の人も安心は禁物
「『サルコペニア』とは、ラテン語で筋肉を意味する『サルコ(sarco)』と、減少を意味する『ペニア(penia)』を合わせた造語です。加齢に伴って筋肉量が減少し、身体機能が極端に衰えた状態をいいます。一方の『肥満』は、体重の割に筋肉量が少なく、体脂肪率が高い状態を指し、糖尿病など生活習慣病のリスクが高くなります」(永田先生)
この二つが合わさったものが「サルコペニア肥満」です。
一般的に、体脂肪が多い肥満体形で筋肉量が少ない状態を指しますが、大きな特徴は、見た目は太っていない人も発症すること。体重が標準的だと安心していても、知らないうちに筋肉量が減って骨量も低下し、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を併発することもあります。
■理想の割合
標準体形で筋肉もある
【以下はどちらもサルコペニア肥満です】
■肥満体形の人
体脂肪率が高く筋肉が少ない
■やせ形・標準体形の人
見た目は太っていないが体脂肪率が高く筋肉が少ない
進行すると要介護の状態にも。食事と運動の2本柱で改善
サルコペニア肥満は40代以降の4人に1人がなり得るともいわれています。
主な原因は、栄養の偏りや運動不足。「例えば、ダイエットをすると体重は落ちますが、同時に筋肉量も落ちてしまいます。人間の体は体重が減ると元に戻そうとする機能を持っているので、筋肉量が減った分、体脂肪を増やして体重を保とうとします。これがサルコペニア肥満の入り口です。やせ形や標準体形の人も体脂肪率が増えることがあり、"隠れ肥満"ともいわれます」(永田先生)。
ただでさえ筋肉は50歳を過ぎると1年に1%ずつ減っていくといわれています。一度減少した筋肉は、運動しないかぎりは増やすことができません。このまま体を動かさないでいると、筋肉は減っていく一方なのです。こうなると転倒や骨折、自律神経の乱れなどを引き起こします。症状が進むと歩行や運動が困難になり、寝たきりになることもあるので注意が必要です。
女性に多い症状ともいわれています。女性は男性に比べてもともと筋肉量が多くありません。また、閉経後は女性ホルモンの分泌が減少し、筋肉や骨が衰えていきますが、その時期に栄養が偏っていたり、運動不足だったりするとサルコペニア肥満になる可能性が高くなります。
取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/やまだやすこ