女性は40代から増え始め、50代から急増し、65歳以上では約40%以上の人が経験していると言われる尿漏れは、私たち世代には身近な問題ですよね。そこで、水分の摂り方や体操、最新治療などの「尿漏れ対策」について、女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長の中村綾子(なかむら・りょうこ)先生にお聞きしてきました。今回は、「尿漏れの治療薬」についてご紹介します。
効き目が高い新薬のほか漢方薬で改善されることも
尿漏れやその原因の一つとなる過活動膀胱は、薬で改善する場合も多くあります。
日本で開発されたものもあり、例えば、β3(ベータスリー)刺激薬は過活動膀胱の治療薬として最近使われ始めた新薬です。
副作用が少なく、特に「ベオーバ」は他の薬との飲み合わせの制限がない薬として注目されています。
これらの薬に合わせ、最近は漢方薬を処方する医師も増えつつあります。
「薬の飲み合わせや副作用が気になる場合は、選択肢の一つとして医師に尋ねてみるといいでしょう。副作用が少なく、効き目は通常の処方薬に比べて緩やかですが、長く服用することで効果が見られます」と、中村先生。
ただし、漢方薬も副作用が全くないわけではありません。
肝機能が悪化する場合などもあるので、よく医師と相談することが大切です。
主な処方薬
効き目は早いが、副作用などに注意。併用して飲める薬も認可されています。
腹圧性尿失禁
●β2刺激薬
[効能] 膀胱の筋肉の収縮を抑え、尿道の筋肉の収縮を強める。世界に先駆けて日本で臨床研究が行われ、使用されるように。
[主な製品名] スピロペント
[製品の特徴] 腹圧性尿失禁では唯一の保険適用薬。
切迫性尿失禁
●抗ムスカリン薬(抗コリン薬)
[効能] 膀胱の収縮に関わる神経伝達物質「アセチルコリン」の伝達力を弱めることで、膀胱の異常な収縮を抑え、尿意の切迫感や頻尿を和らげる。
[主な製品名] バップフォー,ベシケア,トビエース,デトルシトール
[製品の特徴] 効能の強さ、副作用の出方、作用時間などが異なるため、患者の年齢や性別、合併症などを総合的に判断して処方される。「ウリトス」「ネオキシテープ」「ポラキス」などの製品もある。
●β3刺激薬
[効能] 世界に先駆けて日本で発売された過活動膀胱の新薬。膀胱の尿をためる機能も高める。抗ムスカリン薬(抗コリン薬)に比べ、副作用が少ない。
[主な製品名] ベオーバ
[製品の特徴]2018年11月から発売。併用禁忌(他の薬との併用の禁止)がない。
[主な製品名] ベタニス
[製品の特徴]日本で開発され、世界に先駆けて2011年9月に発売された薬。
主な漢方薬
個人の体質を改善する処方で副作用は少ないが、効き目も緩やか。
腎臓の衰えを補う
● 八味地黄丸(はちみじおうがん)
● 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) など
主に切迫性尿失禁に使用。加齢によって腎機能が衰え、血のめぐりが悪くなっている、東洋医学でいう「腎虚(じんきょ)」の状態が引き起こす尿漏れを改善します。
〝気″を補う
● 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
● 葛根湯(かっこんとう)など
主に腹圧性尿失禁に使用。体の生命エネルギーが減っている「気虚(ききょ)」の状態から回復し、元気がなく緩んでいる骨盤底筋などの筋肉や靭帯を強くします。
「冷え」を改善
● 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
● 加味逍遙散(かみしょうようさん)など
尿漏れなどの尿トラブルは体の「冷え」が引き起こす場合が多くあります。血行を良くして体を温め、体内の水分の流れを調整することで、尿漏れを改善します。