仕事に家事にと頑張って、倒れるように眠る毎日。朝起きると疲れは取れていないし、集中力もすぐ切れてしまう...。それ、全て「眠り方」に問題があるかもしれません。そこで、メンタルヘルスと睡眠の専門家・和田隆さんの著書『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(方丈社)から、心身ともに健康を保つための「ストレス解消睡眠法」について連載形式でお届けします。
睡眠を見える化する
2015年12月から、従業員50人以上の事業所に対してストレスチェックの実施が義務化されました。
労働者自身が目に見えないストレス状態を可視化して、セルフケアの実践につなげたり、集団分析の結果から、組織のストレス状態を分析して、職場環境の改善に役立てることを目的としています。
睡眠に関しても、「見える化」することが重要です。睡眠を見える化する際の信頼性の高いアセスメントとして、「アテネ不眠尺度」があります。
アテネ不眠尺度は、2000年に世界保健機関(WHO)を中心に作られたもので、8つの質問に対し、それぞれ0~3点まで4つの評価に分かれおり、過去1か月間に週3回以上経験したことにチェックをつけ、その合計点で自分の睡眠状態がわかるようになっています。
睡眠セミナーの参加者にアテネ不眠尺度を実施してもらうと、6~8割の人が4点以上という結果になります。私たちの生活習慣自体が、すでに不眠を招きやすいものになっていることがわかります。
このアテネ不眠尺度は時間をかけずに誰でも簡単に自分の睡眠状態を知ることができます。自分が眠っている間のことは気づきにくいですし、判断できません。こうしたツールを活用し、まず自分の睡眠状態を把握してみましょう。
自分の睡眠問題を分解する
私は睡眠セミナーでアテネ不眠尺度を使って、参加者に睡眠状態のセルフチェックをしてもらった後、「2点以上の質問項目にチェックを入れてください」とお願いしています。
それは、合計点だけを確認するのではなく、そもそも睡眠に問題があるという結果だった場合、「睡眠の問題を分解して、どこに問題があるのかを明確にすること」が大切だからです。
例えば、最初の「寝つき」についての質問が2点以上だったら、入眠を阻害しているのは何か?眠くないのに布団に入っている、就寝前に考え事をしてしまう、ストレスがあるなどの原因が考えられます。
2番目の「夜間、睡眠中に目覚めることは?」が2点以上なら、中途覚醒が問題なので、寝る前にトイレを済ませておく、カフェインやアルコールの摂り過ぎに注意する、あるいは睡眠時無呼吸症候群を疑ってみるなど、具体的な対策がとれるようになります。
いわゆる不眠症とは、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難、この4つのどれかに問題があることを指します。医療機関では、その状態が1か月以上続いて、日中の生活に何らかの支障があれば、不眠症と診断されます。
6番目、7番目、8番目の質問は、まさに日中の生活に支障があるかどうかを尋ねています。つまり、最初の質問から5番目の質問のすべてに点数をつけたとしても、6~8番目に点数がつかなけなければ、過度に心配する必要はありません。
アテネ不眠尺度は単純な足し算で判定するので、不眠症の疑いがあるという結果が出やすいのですが、日中の生活に支障がなければ不眠症の疑いは今のところない、と考えてよいでしょう。ただし、睡眠に何らかの問題を抱えていると、やがて、日中の体調に悪い影響が出てくる可能性が高いため、注意は必要です。
要するに、全体結果だけでなく、詳細部分の確認が必要なのです。アセスメントとしてのアテネ不眠尺度は、「睡眠で困っている」という主観的で抽象度の高い問題を分解して、睡眠改善のアクションを検討するのに適したツールと言えます。
眠り方を変えてストレス解消!「睡眠の教科書」記事リストはこちら!
ストレスと睡眠の仕組みを完全解説。自分のストレスを「見える化」できるチェック表も付いていて、すぐに対策も