親が東京に来さえすればこっちのもの! ようやく病院に連れて行くチャンスが/うちの親にかぎって!

こんにちは、福岡にいる認知症の母を、東京から遠隔介護をしている松風きのこです。しかしまずは認知症だと家族が受け入れるまでの長い道のりがありました。

家の家事一切を担っていた父が頸椎狭窄症で入院し、母だけでは普段の生活がまったく回らなくなった実家。父が退院してからも当分はリハビリが必要だったので、私はその間、結局3ヵ月も実家で父母両方の世話をすることになってしまいました。その間ほとんど母も寝てばかり。でもそもそも、母はどこが悪いのでしょう。その原因は治せないものなんでしょうか?

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持病の神経痛のため、テレビに出ていた名医を予約。それを口実にこっそり認知症も診てもらおうと画策

父はせっかちで病院でもじっとしているのが耐えられなくて、予定より早く退院してきました。すぐには体が思うように動かないのにやりたいことが山ほどあるので、奴隷のように私が手伝っているのですが、その指示がものすごくうるさい。家事についても自分のルールが厳密に決まっていて、普段一緒に住んでいない私が、知らないで違うことをやってしまうと気に入らないのです。

たとえばゴミは「この量なら今日は30リットルの袋でいい」とか「これなら45リットルだ」などと指示され、サイズの合わない袋に勝手に詰めてしまうと怒られるという細かさ。

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他のことでは豪快なのに、こんなに小さいことにこだわる性格だったとは。台所や洗面所では、頻繁に使う調味料や洗剤なども全てきっちり収納しているので、完璧に片付いているけど使いにくいったらありゃしない。(私は"見せる収納"と称して何でも手の届くところに置いておく派。笑)だから母も分からなかったんですね...。

それまでの私の帰省は2~3日、長くても1週間くらいだったので、父も我慢していたようなのですが、10日も過ぎると毎日怒鳴られていました。こんなに細かくうるさく言われたら、母も家事をしたくなくなるだろうな~と気持ちが分かる気がしました。
でも父が入院するずっと前から、ほとんど寝ていることが多かった母。起きるのを待っていたら洗濯も日が暮れてしまうし、いつまでも食事もできない。どちらが先だったのかは分からないけど、たしかに父がやるしかありません。

母が起きられない理由は日によってさまざまなのですが、腰が痛いとか、胸が痛いとか、だいたい体のどこかが痛いというのです。すでにあらゆる病院を受診して、できる検査はし尽くしたのですが、どこにも悪いところはなく、原因の分からない「神経痛」ということで、起きられるときはほぼ毎日のように整形外科か鍼灸院に通っていました。

そんな父のリハビリと母の鍼灸院をピストン送迎し、家事に明け暮れていたある日、テレビで健康番組を観ていたら、母とそっくりの症状を診断する名医が紹介されていて、それが東京の私の家の近くだったのです。

 

親が東京に来さえすればこっちのもの! ようやく病院に連れて行くチャンスが/うちの親にかぎって! 第8話20180905.jpg

「この先生に診てもらおうよ!私んちから通えばいいじゃない?」それがいい!と3人とも暗闇に一条の光が差したような気がしました。なかなか予約は困難でしたが無事、半年後に予約がとれ、あとは受診すれば体の痛みも治るかもしれない。少なくとも原因が分かれば寝てばかりいることは改善できるのではないか。

それに東京に来さえすれば、どうにかして認知症の病院にも連れて行ける。それだけでも連れてくる意義はある!と考えていました。私の真の目的は、認知症外来を受診させることだったのです。でもこのことは、父にも母にも悟られないようにしよう。こうなったらウソでも何でもついて、ごまかしてでも連れて行こうと決心していました。
フフフ。

次回に続く。

  

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イラスト/にのみやなつこ

 

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松風きのこ(まつかぜ・きのこ)さん

大学進学で上京し、広告制作会社でコピーライターを経験したのち、広告、雑誌を中心としたフリーライターに。父(82歳)母(81歳)は福岡在住。5年前、父が頸椎の手術をしたのを機に、それまで年に1週間程度だった帰省を3~4ヵ月間に増やし、さらに母が認知症と分かったため、東京と福岡を往復しながら遠隔介護中。母が認知症だとは気づかずに過ごした数年の間に、周囲がみんな逆効果の対応ばかりしていたことに思い当たり、この体験記を書くことに。

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