40~50代になって「老後の孤独」が頭をよぎるなら、「心の自立」が足りていないからかもしれません。そこで、「孤独との向き合い方が大切です」という心療内科医の反田克彦さんの著書『孤独を軽やかに生きるノート』(すばる舎)から、「無自覚の寂しさ」への対処法をご紹介します。
凍えるのも傷つくのも怖いけれど
人間関係がうまくいかない人の孤独にはジレンマがつきものです。
それを見事に言い表しているのが「ヤマアラシのジレンマ」という次のような寓話です。
身を切るような冬の朝のことです。
二匹のヤマアラシが寒さをしのぐために、お互いに少しでも近づこうとして震える体を寄せ合います。
ですが、鋭い棘が互いの体を刺すので一定以上は近づけません。
二匹のヤマアラシは、遠ざかることも、近づくこともできずに、とうとう凍えてしまったのです。
二匹のヤマアラシが近づこうとするのは、生物としての本能と言ってもいいでしょう。
寒さや不安を軽減するために、別の誰かを必要としているのです。
家から離れて一人暮らしをするようになった学生が感じるホームシックがそうです。
自分の不安を解消してくれる他者を欲します。
一方、二匹のヤマアラシが離れようとするのは、傷つくことを避けるための知恵です。
くっつけば暖かいだろうけれど、そのためには痛い思いをしなければなりません。
人間で言えば、思い切って話しかけたのに冷たくされたとき。
自分だけがその場から浮いていると感じたときなどに傷つきます。
離れていると寂しいけれど、近づこうとしても傷ついてしまうという葛藤です。
誰だってこんな経験はありますよね。
何も言わないのは赤ちゃんの特権
人間関係というのは、一方がアクションを起こさないと始まりません。
けれど、拒絶される不安が強い人は自分のほうからアクションを起こすのが億劫です。
自分では何も言わずにおいて、他人に自分の意向をくんでもらいたいのがホンネです。
でも、「何も言わずにわかってもらいたい」という心持ちは「甘え」です。
「甘え」は、精神科医の土居健郎さんが提唱した日本人に多いとされる特性で、「周囲の人に好意を持ってもらいたい」という受け身的な他者依存のことです。
特徴は、あえて自分からは何も言わず、遠慮しているような振りをすることです。
それでいて、本当は相手に好意を要求しています。
たとえば、パソコンの操作で困ったそぶりをしながら、誰かに「よかったら教えましょうか」と言われるのを待っているような人っていないでしょうか。
これは周りからの好意を引き出そうとしているのです。
自分で「すみません、教えてもらえませんか」と言わないんですよね。
でも、何も言わずにわかってもらえるのは赤ちゃんの特権です。
何も言わないのは、いつまでもお母さんに甘えていたいだけなのです。
少し観察してから声をかけよう
こういう無意識の甘えは、多くの人が持っているものです。
相手がどういう人かわからなかったり、自分なんかが声をかけるなんて相手に迷惑じゃないかと思っている場合はとくにそうです。
たとえば、初めて参加するパーティーに行って、誰かに声をかけられるのを待っていると、よほど目を引く人でなければまず間違いなく壁の花になります。
知らない人に自分から話しかけるのは勇気がいります。
嫌がられるのではないか、相手にされないのではないかなどと構えてしまいますからね。
今いる場所に親しい人がいないときは、周りをよく見て、話しかけやすそうな人を探しましょう。
相手が見つかったらその人を観察します。
楽しそうにしているのか、居心地悪そうにしているのか。
どんな服装なのか。
どんなふうに人と話しているか。
行動を控えさせてしまうようなちっぽけな恐れはゴミ箱に捨てましょう。
ちょっとでも自分と似た雰囲気があると思える人だと、安心して声をかけやすいかもしれません。
心細い思いをしているときに、向こうから話しかけてくれる人ってとてもありがたいですよね。
その人の印象は記憶にしっかりと刻み込まれます。
二度目以降に話をした人の何倍もしっかりと。
ということは自分から話しかけることの価値はとっても高いことになります。
あまり考えすぎないで、何気なく声をかけてみることです。
うまくいかなくても、拒絶される不安がちょっとずつ減りますから。
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