40~50代になって「老後の孤独」が頭をよぎるなら、「心の自立」が足りていないからかもしれません。そこで、「孤独との向き合い方が大切です」という心療内科医の反田克彦さんの著書『孤独を軽やかに生きるノート』(すばる舎)から、「無自覚の寂しさ」への対処法をご紹介します。
生きていれば多くの人が遭遇する
私たちが孤独をネガティブに感じてしまうとき、「他者との断絶」と「自分ではコントロールが難しい環境的な不安」が念頭にあります。
もちろん、普通に生活していて完全に誰とも接触しないということはめったにありません。
しかし、避けられない環境的な不安に直面したとき、それを一人で受け止めることになるケースは少なくないでしょう。
なかでも多くの人が遭遇するのが次の3つの不安です。
・拒絶される不安
・脱落する不安
・喪失する不安
では、ひとつずつ見ていきましょう。
●拒絶される不安
人間関係を上手に作れなかったり、仲間はずれにされたりすることへの不安です。
拒絶されると、他者からネガティブな評価をされていると考えて、プライドが傷つきます。
人間関係の悩みは何歳になっても出てきます。
でも、これから世界を広げていく若い世代は生活における友人関係の優先順位が高いため、同年代の人たちに仲間として認めてもらえないことをとくに深刻に受け止めがちです。
●脱落する不安
自分が思うように生きられず、落ちこぼれる不安です。
学生時代は勉強でも遊びでも同年代の人たちと横並びで成長していきます。
しかし、社会に出るとそれぞれが自分の進路を選び、そのなかで競争が始まります。
自分の思う通りに生きられる人はいいですが、そういう人ばかりではありません。
大きな成功を望まない人でも、自分の存在を顧みられることなく生きていくのには虚しさをともないます。
もちろん敗者復活は可能です。
レールからはずれることを、脱落(受身的)としてとらえるか、脱出(能動的)としてとらえるかは人それぞれです。
横並びの時代に決別することは自立することですが、自立とは孤独と表裏一体です。
●喪失する不安
当たり前にあったものやそれまでに積み重ねてきたものを、否応なく手放すことで生じる不安です。
別離によって家族や大切な友人を失うことには、大きな喪失感をともないます。
積み上げてきたものには、プライドの拠り所になっているものもあります。
定年によって仕事を失ったり、長く追ってきた夢をあきらめざるを得ないとき、プライドの一部を手放す感覚になる人もいるかもしれません。
健康や若さ、キャリア、配偶者、人的ネットワーク、女性としての役割、親としての役割など、年齢を重ねるほどそれまで自分を構成していた要素が失われていく寂しさを感じます。
一方で、やること、やりたいことが見つからないという悩みも生じやすくなります。
自己評価の低下に結びついてしまう
この3つの不安は、他者から理解してもらえない、関心を持ってもらえない、つまり「他者から承認を得られない」ことを恐れる気持ちがある点で共通しています。
不安が現実になって他者からの評価が低くなっていると感じると、自己評価の低下を招きやすくなります。
自己評価とは自分で自分をどう評価するかということです。
自己評価が低くなると、自分で自分のことを「ダメな人間だ」「人より劣っている」と思い込んでしまいます。
そして本来の自分らしく振る舞うことができなくなってしまうのです。
自己評価の低下は、ネガティブな孤独につながります。
この3つの不安をネガティブな孤独の代表的な原因と考えています。
イラスト/須山奈津希
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