アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
【前回】姑が亡くなり、激動の嫁姑戦争は終結。いやでも、姑のお墓はどうなる...!?/かづ
【最初から読む】アッシー・メッシー・貢君だった彼が突然父に結婚の挨拶! 夫との馴れ初め/かづ
姑の四十九日を迎え、納骨も済ませて一区切りついた頃、私の下弟から電話が来た。
下弟からの知らせは、父が咳が止まらず酷くなったので受診したら入院になり、色々検査をした結果を「ご家族に説明したいから聞きに来てくれ」と言うことで、弟は二人共平日は仕事なので、聞きに行ってほしいという話だった。
私も専業主婦とは言うものの、当時は色々と手広くやっていたのでそんなに暇ではないが聞きに行く事にした。
私は内心「ご家族に説明したい」が引っ掛かったので、胸に黒い雲が広がりかけていた。
約束の日時に病院に着くと、本来なら真っ先に父の見舞いに行くはずなのだろうが、この時は父に会わずにいた方が良いと思って待ち合いで待っていた。
少ない経験の中でだが、患者本人と一緒ではなく、「ご家族様だけ」に説明があるという事がどういう事なのか想像が出来た。
それも相当厳しい状況なのだろうとも...。
時間は外来の診察が終わった頃だったので待ち合いは空いていて、看護師に呼ばれて外来の診察室に入った。
父の担当医と思われる医者の前には、レントゲン写真や検査結果などが並べられていて、私はそのレントゲン写真を見ただけで絶句した。
父の片肺は白く靄がかかっていて肺炎が酷い事は一目でわかった。
医者から色々説明されるも、回りくどいオブラートで包んだような言い方ばかりで、核心的な話をしてほしい私はイライラして来た。
「あの、先生、専門用語を使ったお話をして頂いてもかまいません。」
そう私が言った時、医者は少し躊躇したような表情だったが、逆に話しやすくなったように思ったのか医者は詳しく説明してくれた。
やはり父は肺がんで、既に末期で手の施しようがない状態だった。
私は医者に「それで余命はどれくらいですか?」と聞くと、「早くて1カ月、持って3カ月」と言われた。
その日は父の病室には行かず、そのまま帰宅した。
さすがに今聞いたばかりの話しを自分の中で咀嚼してからでないと、父の顔をまともに見る自信が無かった。
弟達へはその翌日の夜に実家で説明をした。
医者との話しは専門用語いっぱいで話をしたが、それを弟達が分かるように分かりやすい単語を使って説明をした。
現時点での病状の説明と、今後の進行なども含めて話した。
すると下弟が大声を上げて怒鳴り出した。
「姉ちゃんはようそんなに冷静に話しができるな! 余命1カ月? 持って3カ月? なんやそれ!」
下弟に続いて上弟も言う。
「他の医者に診せよう! そんなん信じられへん!」
弟達に分かりやすく話をしているのが、弟達にとっては私が平然と何の感情の動きも無く話しているように受け取ったようだった。
実の親が末期のがんで余命いくばくもない話を、誰が平然とするものか。
ただ感情の赴くままに話したとて、状況が変わる訳ではない。
それも余命が「持って3カ月」であれば、余計にこれからどうするのかを考える方が先だ。
弟二人が他の病院でも診て貰う話をしているが、レントゲンや検査結果などを実際この目で見てきた身としては、もうそんな状況ではないんだと言う事を更に説明した。
「今から他の所に診てもらいに行くと言う事は、まずお父さんにがんであると言う事を告知せなあかん。それに、他の病院でまた一から検査だなんだとしている内に寿命が来る。今はもうそういう状態やねん」
「手術は出来へんのか?」
弟達は口々に手術の話を言う。
私に病院まで行って説明を聞いて来てくれと頼んでおきながら、分かりやすく説明すると「よう冷静に話しができるな!」と怒鳴り、余命が「持って3カ月」と言われているのに他の病院で診て貰おうと言ってみたり手術の話をしだしたりと、現実を分かっていない二人を前にして腹立たしさでいっぱいだった。
結局、弟達が出した結果は父には告知はせず、肺が片方使い物になっていないので手術で切除すると言う内容を父に話して、父もそれを納得した。
術後の父は片肺を失ったものの、退院後に一日も早く仕事に復帰できるようにとリハビリを早くから希望した。
私は久しぶりに見る父の活き活きとした表情を見て嬉しくなった。
その後医者から改めて術後の説明があったが、それは弟達に聞きに行かせた。
「片肺取ったけど、リンパにはもう散ってて色んな所に転移してるんやって...。がんが脳に転移すると、意識障害が出て僕らの事も分からんようになるんやって...。」
下弟が消え入るような声で力無く私に説明してくれたが、私は「そんなん分かってた事やん。無駄に痛い目させたね」と心の中で言った。
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