<この体験記を書いた人>
ペンネーム:fennel
性別:女
年齢:55
プロフィール:地方在住の専業主婦です。残りの人生、いかに生き抜くかを模索中です。
今は築年数の浅い賃貸住宅で、快適に一人暮らしをしている80歳の実母。
ふとした時に、5年前に住んでいた家の話をすることがあります。
当時75歳の母は、古くて大きな家に1人で住んでいました。
母にとっては亡くなった父との思い出がたくさんあり、とても愛着のある家でした。
しかし、築年数は40年以上であちこちで不具合が。
壁にはヒビが入っていたり、床は水平ではなく、歩くたびにギシギシと鈍い音が鳴ったり...。
ガラス戸はうまく鍵がかからず、カーテンはボロボロでした。
さらに、半地下の駐車場がある分、玄関が高い位置にあり、家に入るのに10段以上の階段を登らなくてはなりません。
母は昔から足腰は丈夫だったため、その階段も比較的スイスイ登れていました。
しかし、冬は雪が多く積もる地域なので、階段や家の周辺の除雪のことを考えると、この先ずっとここで1人で暮らしていくのは難しくなるのではないかと思ったのです。
いろいろ考えた結果、まだ体力も気力もある今のうちにこの家を解体して、引っ越すことを提案しました。
母はしばらくはなんだかんだと理由をつけて渋っていましたが、説得するしかありません。
「あの階段を登れなくなったら、家に入れないよ。雪かきはどうするの?」
そんなセリフを呪文のように言い続けた結果、ついに母が観念してくれ(?)、解体することになりました。
そこからは全ての手続きや手配を私が請け負い、トントン拍子に事が運びました。
ただ、祖父母の代から引き継いできた物が地下と2階を覆い尽くしていたため、それらを処分するのは並大抵の事ではありませんでした。
到底母と私の2人では手に負えないので、都会で暮らす実姉も呼んで3人がかりで作業に取り掛かったのです。
以前から「親家片(おやかた:親が住む家を整理整頓するという造語?です)」が課題だった私たち姉妹は「とにかく捨てる」を前提に、何があってもブレないと固く決意しました。
姉が実家に到着した日は時間が遅かったので作業はせず、翌日から開始することになりました。
その日の夜、寝ている姉の手の甲に、なにかが「スルスル」と触れました。
驚いて飛び起きると、ネズミが一目散に逃走していく姿が!
触れたのはネズミの尻尾だったのです。
「ぎゃあぁ~っ! なにこの家!? もうやだぁー!」
叫ぶ姉。
私たちの固い決意は一夜にして消えてしまいました。
怒る姉を何とかなだめながら、私は母を問いただしました。
「本当はネズミがいること知ってたんじゃないの? 近所迷惑にもなるよね? やっぱり解体するのが正解だわ」
淡々とダメ出しをする私に、母は娘に嫌な思いをさせて悪かったと思ったのか、ため息交じりに小さくうなずきました。
その後はひたすら分別をしながら、不要な物は車庫に置き、溜まってきたらその都度業者を呼んで捨てる、という作業を約2カ月繰り返しました。
そんなある日、解体業者が地下で見積りをとっていた時「うわっ、なんだこれ?!」と声を上げました。
今度はなんだ、と恐る恐る現場に行ってみると、無数のアリがうごめいていました。
物に隠れて目に触れない部分に巣を作っていたようです。
これにはさすがの私も、姉と一緒に悲鳴をあげてしまいました。
解体日まではまだ期間があったので、放置していてはこれまた近所迷惑になりかねないと、すぐに駆除業者に依頼し事なきを得ました。
何というアリかは忘れてしまいましたが、古い木材やコンクリートに巣を作るアリもいるそうなので、みなさんも気をつけてくださいね。
そんなこんなで、ドタバタだった私たちの「親家片」は、無事に解体日を迎えて終了しました。
そんな母は、今でも「あれがない、これもない、あの時全部捨てられてしまったものなぁ」などと言うことがあります。
まったく、私たち姉妹がどれほど大変な思いをして「親家片」を実行したか分かっているはずなのに。
遠方から何度も足を運んでくれた姉の苦労を本当に分かっているのかと、がっかりすると同時に腹立たしく思っています。
関連の体験記:認知症の母が、妹の家で2度のおもらし。妹は「しっかり者だった母」の現実を受け止めきれず...
関連の体験記:「月に一度は泊まりにおいで。楽しいわよ」70代の義母から突然の提案。夫は快諾したけど...
関連の体験記:どんな予定にも「お袋も誘うか」という夫。決して嫌いではないけど...モヤモヤが止まらない!
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。