こんにちは山田あしゅらです。
『13番さんのあな―介護家庭の日常―』というブログで義両親の介護の様子を嫁の目線で綴り始めて10年以上が経ちました。義両親と同居しながら介護をしていた当時のことを思い出しながら書いています。
前回の記事:今と昔を行ったり来たり。「認知症の義母」の世話を負担に感じなかった理由は...⁉
義父がデイサービス利用を始めて数日が経ちました。
当初はまだ週に1回、土曜日のみの利用でしたが
「もう行かない。」と、いつ言い出すか分からない義父のこと。
続けられるかどうか気をもみながら見守っていました。
ところが周りの心配をよそに本人は結構楽しく通っている様子。
やれやれと一安心していたのですが...。
二人同時にデイサービスへ出かけた土曜日の朝。
シーツの取り換えのために義父母の部屋に入った時のことです。
相変わらず散らかった部屋の床。
たくさんのスナップ写真が散らばっているのに気が付きました。
ふと気になって拾い上げて見てみると
どうやら義父がデイサービスで撮った写真のようです。
デイサービスの看板やらアプローチに植えてある植物やら、
それぐらいならまだ見過ごせるのですが、
デイの利用者さんやスタッフの人たちと思われる人物の写真が何枚かあったのです。
同じ日にデイサービスを利用している全員を写したのでしょう。
ピースサインして笑顔で写っている人もあれば、
にこりともせず緊張した面持ちの人、
中にはそっぽを向いてる人まで。
写っている人の表情は様々です。
義父が通うデイサービスつるさんでは特に厳しい決まりはないものの、金銭やアクセサリーなど、利用者間のトラブルを避けるために不用品は出来るだけ持参しないということになっていました。
送り出すときには全くそんなそぶりを見せず、私も気が付かなかったのですが、おそらく義父がこっそり自分のデジカメをデイサービスに持ち込んだみたいです。
リハビリ主体のデイサービスという性質上、この施設には身体が不自由な人が多く通っています。
もしかしたら自分の姿が写されるのを嫌う人もあるのでは?と心配になりました。
よくよく見ると、写真にはそれぞれ義父がワープロ打ちしたコメントが貼り付けてあり
写真の本人が読んだらおそらく気分を害するようなことも書いてありました。
そう言えば義父がデイサービスから帰って来て、私たちに話す内容のほとんどが
「他の利用者さんのこと」というのも気になっていました。
デイサービスという、いわば久しぶりに訪れた小さな社会復帰。
改めて周りを見回した時、義父は何を思ったのでしょうか?
義父も現役の頃はそれなりのポジションで責任のある仕事を任されていました。
もちろん一般の常識人として社会と関わりを持っていたと思います。
リタイアした後は重責から解放される一方、今まであった肩書とは無縁の生活となりました。
そこで上手く方向転換出来る人ならいいのですが、それまで仕事一筋だった義父。
70も近くなってから新しい自分を見つけることはなかなか容易なことではなかったようです。
義父の場合、それとほぼ同時に病を得て自分の身体が思うように動かなくなってしまう不運もありました。
そして家に引きこもる生活が数年間続いてしまったわけです。
沢山の拠り所を失った義父がどういった思いでこの写真に添えたコメントを書いたのか。
これらを見ながらしばし考え込んでしまいました。
しかしやたらと他人の写真を撮ることもさることながら、他の利用者さんとの関わり方によっては、いらぬトラブルを招きかねません。
せっかく楽しく通い始めたデイサービスなのに、これが火種になって行きづらくなってしまうことも考えられます。
そこでデイサービスに手紙を書くことにしました。
・ずっと通所をいやがっていた義父がつるさんには喜んで通うようになったことへの感謝
・義父の数少ない趣味が写真撮影であること
・デイサービス内で他の利用者さんの写真を撮っているようだが嫌がっている人もあるのではないか心配していること
・もし、デイサービス側でお困りなら家族側からも申し添える
と、内容はこんなところです。
翌週、帰りの送迎スタッフさんが義父を車から降ろす前に説明してくれたのは
「利用者の皆さんも、撮っていただいて 喜んでいる方もいらっしゃいますが、やはり嫌がられている方もいらっしゃいます。山田さんには、わけをお話し今回限りということでご了解いただけました。」ということ。
やはり、デイサービスでも義父の写真撮影は問題になっていました。
しかしそこは介護のプロ。
本人の気分を害さぬよう上手く説得してくださったようです。
家に引きこもっていれば起こらなかった問題も他人との関わりが出来れば様々な摩擦を生じます。
他人の立場に立って物を考えるということがだんだん難しくなってきていた義父。
デイサービスはそれを思い起こさせる場でもあるのではないか。
そう思った出来事でした。
とりあえず
・・・こういうことですよね。
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