<この体験記を書いた人>
ペンネーム:neoact
性別:男
年齢:43
プロフィール:建築家。2児の父。3人兄弟の末っ子で父は3年前に他界、高齢でアクティブな母を持つ。
不要不急の外出は控えていた2020年GW初日の出来事です。
私(43歳)には、5月末で、80歳を迎える母親がいます。
母親は60歳のときに父親と別れ、別の男性(同級生)と再婚して、私の家から車で20分ほどのところに二人暮らしをしています。
母は絵の先生をしており、今まで大病もなく元気に暮らしています。
とはいえ、さすがに高齢のため、時折、私の妻(38歳)が気にかけ、孫の顔を見せがてら様子を伺いに行くのですが、コロナの影響もあり、このGWは手紙と孫の写真を届けることにしました。
それから二日ほど経ったころ、母親から妻へ電話がかかってきました。
私が隣で話を聞いていると、母の元気な声が聞こえます。
「お手紙ありがとう。嬉しかったよ。寄ってくれればよかったのに」
「いいえ、こんなときだったから、お手紙の方がいいかなと思って」
そこからお互いの体を気遣ったり、孫たちの近況報告をしたり、私も電話に出て、和やかに話を咲かせていたのですが、急に思い出したかのようにお寺の話になったのです。
聞く所によると、母親の父母(私にとっての祖父、祖母)が眠っているお墓を管理している寺の鐘が壊れてしまい、現在檀家から寄付を集めている、とのこと。
すでに100件以上の寄付が集まっており、寄付金は一家庭20万円(!)だそうです。
そもそもお寺の鐘って壊れるものなの? 昨年の墓参りのときには特に問題もなさそうだったのに...
単に鐘を新しくしたいから寄付を募っているんじゃ...と少し疑問もありましたが、母親は話を続けます。
「私は嫁いで行った身なので口を出すつもりはないけど、あんた連絡がつかなかったから、私が代わりに払っておいたから」
どうやら、兄たちと折半して支払いも済ませてしまったようです。
いやいや、うちには誰からも連絡がきていないんだけど?
そもそも墓守する人が責任を持って調整するべきですよね?
兄弟の中で誰が墓守するとか決めておいたわけではないけど、相談もなく兄弟の中で私だけを外すなんて、親しき中にも礼儀ありでしょ、と思いつつ母親は話を続けます。
「あんた、毎日忙しくしているでしょ、仕事も変わったばかりだからやりくり大変よね。お金は出世払いでいいからね、じゃそう言うことで」
最後は母が淡々と締め括り、電話を切られてしまいました。
電話が終わってしばらくは、80歳を過ぎた母親に、いつ出世払いすればいいのだろうとモヤモヤしていたのですが、次第に、私が末っ子で一番可愛がられていたことを思い出しました。
この年になっても親の気持ちは変わらないんだな、と感謝すると同時に、それが原因で他の兄弟からの嫉妬の対象になる不安を抱えています。
そもそも私も、祭祀に関しての知識もあまりなく、兄弟間でしっかりとした主宰者を決めたわけではありません。
この年齢になってきますと、この辺りもきちんとしておいた方が良いようです。
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