「そんなの関係ねぇ!」の誕生秘話。「ナンバー1、オンリー1」になれた、先輩からの愛のムチャぶり特訓

ナンバー1か、オンリー1か

稲垣栄洋先生――ナンバー1であることが大切なのだろうか?

それともオンリー1であることが大切なのだろうか?

じつは、自然界には明確な答えがある。

「ナンバー1でなければ生き残れない」これが自然界の法則である。

自然界はナンバー1をめぐるイス取りゲームである。イスを取れないナンバー2は、滅びるしかないのだ。

しかし、そうだとすると不思議である。

ナンバー1でなければ生き残れないとすれば、自然界にはたった一種類の生き物しか存在できないことになる。

それなのに、実際には自然界はたくさんの生き物があふれている。

これはどうしてなのだろう?

じつはナンバー1になる方法は一つではない。ナンバー1になる方法は、たくさんあるのだ。

そして、ナンバー1になる方法を手に入れた生物が生き残る。つまり、ナンバー1になる方法は、その生物だけのオンリー1のものなのだ。

「ナンバー1になるためのオンリー1の場所」を手にすることが大切なのである。

それでは、どのようにすれば、ナンバー1になることができるだろうか。

重要なことは、しぼり込むことだ。

たとえば、植物の中でナンバー1というのは難しい。

しかし、水辺で咲く花というと、少ししぼり込まれる。さらに「水辺で春に咲く花」というように季節をしぼり込むと、ナンバー1になれる可能性が高まる。

効果的な方法は、掛け合わせることだ。「水辺で咲く」「春に咲く」「朝に咲く」としぼり込んだ要素を掛け合わせていくと、しぼり込まれて、よりナンバー1になりやすくなるのだ。

生物にとっての「ナンバー1になるためのオンリー1の場所」は、生物学では先述した「ニッチ」と呼ばれる。

ビジネスの世界でニッチというと、「すき間」というイメージがあるが、実際にはニッチはすき間という意味はない。ニッチは大きくてもいいのだ。しかし、大きいニッチでナンバー1になることは簡単ではない。ナンバー1になろうとすれば、条件をしぼり込んだ方がよいから、結果的にニッチは小さくなる。そして、さまざまな生物が小さなニッチを分け合いながら暮らしているのである。

オンリー1の独創性を演出する上で、効果的な方法の一つが「かけ算」をすることだ。

「怖い話」を芸にする人はいくらでもいる。服を脱ぐ裸芸をネタにする人もいくらでもいる。そこで、小島さんは「怖い話」と「裸芸」を組み合わせた。しかし、それでもお笑いとしては弱い。そこで、さらに「あーヘタこいた! でも、そんなの関係ねぇ!」と音楽とフレーズネタと振付を組み合わせた。「そんなの関係ねぇ!」は、まさに、かけ算によって生み出されたのである。

 

稲垣栄洋
農学博士、植物学者。1968年、静岡県生まれ。静岡大学大学院教授。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に、『弱者の戦略』(新潮選書)、『生き物の死にざま』(草思社)などがある。


小島よしお
芸人。1980年、沖縄県生まれ。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年より、ピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」で大ブレーク。年間100本以上の子ども向け単独ライブを行い、“日本一子どもに人気のお笑い芸人”として活躍している。主な著書に、『おっぱっぴー小学校算数ドリル』(KADOKAWA)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)などがある。

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※本記事は稲垣栄洋、小島よしお著の書籍『雑草はすごいっ!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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