「そんなの関係ねぇ!」の誕生秘話。「ナンバー1、オンリー1」になれた、先輩からの愛のムチャぶり特訓

競い合うより助け合う

稲垣栄洋先生――小島さんは、常に誰かと協力している。

先輩にアドバイスをもらったり、新しいギャグも仲間に見てもらったりする。

後輩にかぶり物を作ってもらったり、作家さんとネタを作ったり、何か仕事をするときも、仲間とチームを作ることを意識している。

競争し合い、蹴落とし合う芸能界の中で、助け合うことを意識しているように見える。チームを作ることで、自分がやるべきことが明確になり、サボれなくなるというメリットもあるらしい。

動けない植物は、さまざまな動物と助け合っている。

たとえば、花粉をハチなどの昆虫に運んでもらう。

あるいは、熟した果実を鳥に食べさせる。そして、消化器官を通った種子が糞と一緒に体外に排出されることによって、種子を遠くにばらまいているのだ。

このような共生関係は、どのようにして築かれたのだろう。

進化の歴史をさかのぼると、植物の花にやってきた昆虫は、もともと花粉を食べるためにやってきた害虫だった。しかし、その害虫を利用して花粉を運ばせるようになったのだ。鳥との関係もそうである。植物は、果実を食べにやってきた鳥を利用して、巧みに種子を散布する。

こうして、敵であるはずの生き物を味方につけて助け合っているのである。

自然界では、激しい生存競争が繰り広げられている。

そこにはルールも道徳もない。とにかく、生き残れば勝ちという熾烈な競争が繰り広げられている。

そんな自然界で生物たちが最終的にたどりついた戦略は何だろう。それは「助け合う」ことなのである。

どんな手を使っても勝てばいいという自然界で、意外なことにほとんどの生き物たちは助け合っている。生物の進化がたどりついた答えは、「競い合うよりも助け合う方が有利」ということなのだろう。

セイタカアワダチソウは、北アメリカ原産の植物である。根から毒を出すので、日本に入って来たばかりのころには日本の植物は駆逐されて、セイタカアワダチソウが独り勝ちをしてしまった。しかし、それはセイタカアワダチソウにとっても予期せぬことだったらしい。セイタカアワダチソウは自分の毒で自家中毒を引き起してしまい、すっかり衰退してしまった。

今ではセイタカアワダチソウも、他の植物と共存して生えている。植物も互いに競い合いながら助け合っているように見える。

競争が厳しい社会だからこそ、結局、助け合ったものが生き残っていくのである。

 

稲垣栄洋
農学博士、植物学者。1968年、静岡県生まれ。静岡大学大学院教授。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に、『弱者の戦略』(新潮選書)、『生き物の死にざま』(草思社)などがある。


小島よしお
芸人。1980年、沖縄県生まれ。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年より、ピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」で大ブレーク。年間100本以上の子ども向け単独ライブを行い、“日本一子どもに人気のお笑い芸人”として活躍している。主な著書に、『おっぱっぴー小学校算数ドリル』(KADOKAWA)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)などがある。

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※本記事は稲垣栄洋、小島よしお著の書籍『雑草はすごいっ!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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