小島よしお「あの人に出会っていなければ、お笑い芸人として活動していなかった」偶然が呼び込んだ幸運

自分の居場所を作る

稲垣栄洋先生――お笑いグループのメンバーになるためには、自分の居場所となるポジションが必要となる。
芸能界では、それぞれの役割というかポジションがある。

たとえばアイドルグループでは、ビジュアルがいいとか、トークが得意とか、歌が上手いとか、役割分担がある。

あるいは、テレビ番組の中でもトークを回すMCがいたり、高学歴キャラがいたり、いじられキャラがいたりといった役割分担がある。

そして、芸能界の人たちが恐れるのが「キャラがかぶる」ということである。

異なる役割の人たちが集まるから、バランスが取れる。同じ役割の人が何人もいると、バランスが悪くなってしまうのだ。

じつは、自然界でも同じである。

自然界でも、すべての生物が自分の居場所を持っている。

雑草の戦略を語る前に、まずは生物に共通した「法則」を説明することにしよう。

すべての生物は自分の居場所を持っている。そして、居場所を持たない生物はこの自然界に存在することが許されないのだ。

生物の世界では、この居場所のことを「ニッチ」という。ニッチは具体的な場所というよりも、「ポジション」のような意味合いだ。

それぞれの生物が、それぞれのポジションを持っている。これがニッチである。

たとえば、野球でいえば、一塁手や二塁手というポジションがある。試合に出られる一塁手は一人だけである。ポジションをめぐるレギュラー争いは熾烈を極める。

しかし、ポジションを獲得した一塁手と二塁手は、共存することができる。

自然界でも同じように、ポジションをめぐる争いがある。そして、ポジションを得た生物だけが、自然界に居場所を得ることができるのである。

たとえば、サバンナでは高い木の葉はキリンが食べる。低い木の葉はインパラが食べる。そして草丈(くさたけ)の高い草をシマウマが食べて、丈の低い草をヌーが食べる。

ポジションは、芸能界でいえば、キャラのようなものだ。

このようにそれぞれのキャラを分け合って、自分の居場所を確保しているのだ。

キリンやインパラ、シマウマ、ヌーは同じ場所にいるが、食べ物が異なるから、サバンナの草食動物は争い合うことなく、共存することができる。

もし、「高い木の葉を食べる」というキャラがかぶると、激しい競争が起こる。そのため、居場所はかぶらないことが大切なのだ。

自然界で生き残るために必要なことは、他の生物よりも優れていることではなく、他の生物とは違う自分だけのニッチを持つことである。

植物は、動物のようにエサが異なることはない。どの植物も光や水を求めているから、ニッチを分けていることはわかりにくい。

しかし、雑草を見ると、たとえば踏まれやすいグランドを見ると、同じ踏まれる場所でも、頻繁に踏まれる場所と、あまり踏まれない場所では、生えている雑草の種類が異なっている。

どの雑草も自分だけの居場所を持ち、自分の得意なところで生えているのだ。

 

稲垣栄洋
農学博士、植物学者。1968年、静岡県生まれ。静岡大学大学院教授。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て現職。主な著書に、『弱者の戦略』(新潮選書)、『生き物の死にざま』(草思社)などがある。


小島よしお
芸人。1980年、沖縄県生まれ。早稲田大学在学中にコントグループ「WAGE」でデビュー。2006年より、ピン芸人として活動。2007年に「そんなの関係ねぇ!」で大ブレーク。年間100本以上の子ども向け単独ライブを行い、“日本一子どもに人気のお笑い芸人”として活躍している。主な著書に、『おっぱっぴー小学校算数ドリル』(KADOKAWA)、『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)などがある。

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※本記事は稲垣栄洋、小島よしお著の書籍『雑草はすごいっ!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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