「我慢して今の仕事を続けるべき」「料理は手作りがいい」――「普通」を押し付ける親に欠けている「能力」

親世代は"内省力"がうまく培われていない

画一的な価値観を教え込まれたことにより、親世代は"内省力(自分の気持ちや考え、行動を顧みる力)"が培われていない傾向にあります。

"内省力"という自分を観察するスキルは、対人関係においてとても重要です。

「自分は日ごろどんな言葉を使っているか」「自分はどんなときにイライラしやすいか」「自分は相手にどう接しているか」など、自分の特性に気づけなければ、人と友好的な関係性を築くことが難しくなります。

親が"内省力"に欠けていると、こちら側の希望は受け入れられず、あちら側の主張は脅迫的であるという事態を招き、親との会話がストレスになってしまいます。

"内省力"が弱いからこそ「普通」を押しつける

内省力が乏しいと、自分の感情や思考を認めて受け入れることができません。そのため、「自分はこうしてほしい」「しないでほしい」と自分の気持ちとして言語化するスキルも身につかないことになります。

そうしますと、親は親自身の欲求を自分のものと認められなかったり、表現できなかったりします。その結果、「普通はそうする」「これが常識だ」という言い方によって子どもの行動をコントロールし、自分の要求を通そうとするのです。

「普通はそう」「常識はこう」という言い方は、「そこから外れた場合は異常で非常識」となるため、言われたほうは不快になるだけでなく、従わなければ人格的に問題があるかのような気持ちになってしまいます。

そんなしんどい気持ちから、親の言う通りにすると、親側はますますこの"効果的な"言い方をするという、悪循環が起こりがちです。

 

寝子(ねこ)
臨床心理士。公認心理師。
スクールカウンセラーや私設相談室カウンセラーなどを経て、現在は医療機関で成人のトラウマケアに特化した個別カウンセリングに従事。トラウマの中でも、親子関係からのトラウマケアと性犯罪被害者支援をライフワークとしている。
臨床業務の傍ら、ツイッター(X)で心理に関する発信をし始め、フォロワー1万人超え。
対処法よりも自分を理解することに重きを置いた内容が支持され、ブログ記事は「探していた答えが書いてあった」「自分の状態がクリアに理解できた」と評判になっている。

※本記事は寝子著の書籍『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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