「ゲーム」と「万歩計」が新人育成の理想? 上司や人事が新入社員から期待されていること

フィードバックの理想は、「ゲーム」と「万歩計」

フィードバックの理想形はゲームだと思う。

ゲームにはいろいろな種類があるが、やはりコンピュータ・ゲームは最強だ。したがって、現代における最強のフィードバックの使い手は、ゲーム・クリエイターたちではないかと、本気で思っている。

ゲームにはいくつかのタイプがあって、好きなゲームのタイプによってモチベーションのタイプも推測できるというのが僕の持論だ。

例えば、僕は「ドラクエ」が好きだ。というか、ドラクエで育った。身体の3分の1はドラクエでできている(残りの3分の2はガンダムと水泳です)。

当時のグラフィックや音響などは、2023年現在のゲームに比べればお粗末なものだった。それでも、ものすごい数の人たちが夢中になった。つまり、画質や音質などは、ゲームの本質を決める決定要因にはならないということだ。

人はなぜ、そこまでゲームに夢中になるのだろうか?

ゲームをやらない人のために、もう1つフィードバックの理想形を提示しよう。それは万歩計だ。

僕の理解はシンプルだ。万歩計を持つだけで、単なる散歩にアクセントが生まれる。万歩計を持つと、歩行距離や所要時間がわかる。ただそれだけ。

にもかかわらず、もう少し遠くへ行ってみよう、もっと早く歩いてみよう、という風に、歩くことのモチベーションが一段上がる。

歩数を数えてくれる、というたったそれだけのことなのに、なぜ歩く意識に変化が生じるのか。散歩するという行為自体に、歩数のカウントは必要ない。なのになぜ、スマホのアプリとして成立するのか。

類似例をあげるなら、フィットネスジムにあるランニングマシンも同様だ。走行距離や速度計があるマシンとないマシンなら、多くの人は前者を選択する。それはなぜか。

その答えも、やはりフィードバックにある。

 

金間大介
金沢大学融合研究域融合科学系教授。東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。一般社団法人日本知財学会理事。北海道札幌市生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学経営情報学部、東京農業大学国際食科情報学部、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系、2021年より現職。主な著書に、『モチベーションの科学 知識創造性の高め方』(創成社)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)、『先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)など。

※本記事は金間大介著の書籍『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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