一方で、カウンター的なロビイングもあるわけです。
コロナ後、タクシー不足でも自家用車を利用した「ライドシェア」が解禁されないのは、タクシー業界がイヤがってロビイングをしているからです。海外では、ウーバーのライドシェアとしての自家用車が走っていますが、日本では普及していません。ネット企業など海外の影響力の大きな事業者も事実上のロビイングを盛んに行っています。
ある種、業界の声が適切に政治に反映されているともいえるし、でも、参入したい事業者からすれば、ビジネスの機会が奪われている。どちらがいいかはなんともいえないですね。
民泊なんかもそうです。今、訪日客が増えて、ホテルが足りない。観光客に個人の自宅やマンションの空き室を貸し出すビジネスが「民泊」ですが、日本だと、「住宅宿泊事業法」という法律で相当に管理された民泊しか認められていないんです。
これを「既得権の強烈な抵抗」と捉えるのかどうか。ライドシェアが「白タク」と呼ばれて日本では原則禁止されているのも、民泊の規制が残っているのも、すべて政治と関係します。
最近は、「買い物弱者」の問題やタクシードライバーの高齢化問題が深刻で、ライドシェアの解禁には賛成の声が多くなってきました。政策トレンドの「シェアリングエコノミー」ですが、菅義偉前首相など前向きな議員も相当数いるので、タクシー業界は厳しい立場。国土交通省が慎重姿勢を変えるのかどうか。最後は政治決着でしょう。ロビイングそのものが問題というより、ロビイングのルール、特に透明性を担保するルール不足が問題です。
業界団体は、政治に課題感とか要望を伝える古典的な存在です。各社がバラバラに発言しているとなかなか声が届かないので、みんなが集まって政治に声を届ける。「〇〇先生、お願いします」と、議連をつくらせたりもします。「事務局は業界団体でやりますから」と事務局を丸抱えしたりして、協力してくれそうないわゆる族議員を集めてきたり、そういう活動をしながら「こういう補助金をつけてほしい」とか「規制改革をして」と働きかけるんです。
「サーフィン議連」なんていうのもあるんですよ。サーフィンが東京2020オリンピック・パラリンピックの種目として認められたこともあって、業界を盛り上げたいということでサーフィン業界と繋がった議連なんですが、これはあまりうまくいっていません。ノウハウも乏しいからでしょうね。議連はさまざまありますが、議連によって〝熱量〟は相当に違います。