『幸せに生きるための政治』 (西田 亮介 (著), 池上 彰 (責任編集)/KADOKAWA)第6回【全9回】
物価も税金も高くなり、日々の暮らしがたいへんになっていく一方で、政治家がらみのさまざまなニュースを耳にする毎日。「このままじゃいけないんだろうけど、でも政治のことはやっぱりよくわからないし...」と過ごしている人も多いのでは? そんな人に向けて社会学者の西田亮介さんが身近な例を挙げてアドバイスし、池上彰さんが責任編集をした書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋してご紹介します。
※本記事は西田 亮介 (著), 池上 彰 (責任編集)の書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
最近多い電動キックボード。あれも政治が関わっているのか
補助金をもらいたいと思うと、企業はまずは霞が関(省庁)や政治家、議連などにも陳情します。議連とは議員連盟の略。さまざまな議連があります。自分たちの窮状を訴えて、議員に動いてくれるよう働きかけたり、イベント登壇を企画したりします。人間は弱いですから、いつの間にか業界の「お抱え」になってしまうことがあります。いわゆる族議員です。
こうして、一部の企業や業界の影響力が、政治に過剰に行使されることになります。
陳情やロビイングは大企業だけのものではありません。NPOやスタートアップ企業、外資系企業も行っています。最近だと、「電動キックボードの規制緩和」などがうまくハマった例ですね。その時々、「政策のトレンド」がありますから、それとからめるんです。
「電動キックボードって、エコじゃないですか?」「北欧ではやっています」という理由を、それらしいグラフや資料なんかと一緒にくっつけていくと、不思議なことに段々それらしい資料ができあがってきます。
かくして「あ、いいね。じゃあ規制緩和の対象にしよう」と話が進んでいくことになります。結局、道路交通法が改正され、国土交通省が定める規格を満たした電動キックボードなら、運転には免許不要。ヘルメットの装着もなしでOKになりました。
その後どうなったか? 事故が多発。2023年の道路交通法改正で電動キックボードが解禁されましたが、解禁された7月の人身事故件数が同年1~6月の事故件数のおよそ半分程度の数にのぼりました。法改正の背景には、電動キックボードのシェアリングサービスを提供する事業者のロビイングがあります。