『幸せに生きるための政治』 (西田 亮介 (著), 池上 彰(責任編集)/KADOKAWA)第1回【全9回】
物価も税金も高くなり、日々の暮らしがたいへんになっていく一方で、政治家がらみのさまざまなニュースを耳にする毎日。「このままじゃいけないんだろうけど、でも政治のことはやっぱりよくわからないし...」と過ごしている人も多いのでは? そんな人に向けて社会学者の西田亮介さんが身近な例を挙げてアドバイスし、池上彰さんが責任編集をした書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋してご紹介します。
※本記事は西田 亮介 (著), 池上 彰(責任編集)の書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
政治を学ぶことにメリットを感じない。そんな私はどうしたらよいのか
ちょっとボヤいてもいいですか。ぼくだって仕事でなければ勉強しません。
政治の本は、一所懸命に書いても売れないんですよ。書店へ行っても、女性が政治の本を手に取っているところをほとんど見たことがありません。
政治について論じているのが、スーツにネクタイのおっさんばかりだからでしょうか。
それに対して、経済の本は売れるんです。勉強すると投資が成功する確率も上がり、自分にメリットがあるからですよね。でも、政治の本を2000円で買っても、2000円のリターンはあるのでしょうか? はっきりしませんよね。なんだかんだで、ずっと自民党と公明党が与党で、どうも政府も政治家も与党も野党も無茶苦茶やっているようなのに、あまり変わらない。勉強して、選挙で投票して、なにか意味があるのか。そこにわざわざ2000円の本を買って勉強する合理的理由はあるのでしょうか。政治参加と社会的コストを分析する研究はありますが、個人が体験することは困難です。
みなさん、毎日自分の仕事でクタクタですし、わざわざ政治の勉強をしようと思わないのはわかります。勉強するなら、政治ではなくキャリアアップするテーマか、株か投資の話がよい。当然です。
ぼくは政治についてウンチクたれるのが仕事ですから、新聞を読むのも、政治家の話を聞きに行くのも「投資」なんです。仕事にすると、なにかが変わりますよね。政治を仕事にしている人がそれなりに政治について詳しいのはごく自然なことです。政治の本を書く人というのは、その意味で背景が一般的な読者とかなりかけ離れています。
でも、これは言いたい。政治が好きとか嫌いとか、役に立つとか立たない云々といったわれわれの認識とはほぼ無関係に、身の回りのいろいろなものが政治と深く関係しています。国公立学校の授業料もそうですし、新型コロナ給付金もそうです。最近、街中に危なっかしい電動キックボードが増えたのもそう。ビジネスも教育も税金も、ぜんぶ、政治が決めている。