こんな日本に誰がした!「失われた30年」は政治が関係しているの?/幸せに生きるための政治

政治の課題を強いて挙げるとすると、とりあえずは2つ。1つは消費税率の引き上げを中途半端なところで2度やってしまったこと。安倍晋三元首相は、「デフレを脱却するまで、消費税率は上げない」と公言していたのに、2度も上げました。国民はもっと「ウソつきだ」と、怒るべきでした。増税で嬉しいなんていう奇特な人はそれほどいないですから、そうしたことにいちいち怒るべきなんです。個人的には、消費税率の引き上げはもっと先延ばしにすべきだったと思います。

それから3本の矢の3本目の「成長戦略」がなかったことです。金融緩和にせよ、円安への誘導にせよ、基本的には成長戦略が盛り上がってくるまでの〝時間稼ぎ〟だったはずです。次の新しい〝産業の芽〟にお金を流して、景気の好循環をつくると書いてありましたよね。

それが花開いて、実体経済も成長基調に乗っていくのが好ましかったわけですが、それがなかった。でもぼくは、相当程度アベノミクスは評価しているんです。株価は上がったし、失業率も下がったし、正規雇用者も増えました。自殺者数も3万人を割り、2万人近くまで下がりました。あれがなかったら日本はどうなっていたのか。「アベノミクスは失敗だった。効果がなかった」というステレオタイプな批判はナンセンスです。

円安が進み「安い日本」になりましたが、輸出産業はたいへん好調です。輸出ビジネスはのきなみ増収増益ですから、本来であれば企業が社員に人件費で還元すべきです。それを怠ってきたというのがあります。だから物価高で苦しんでいるのに、われわれの給料が伸びない。下請け企業や系列企業にも、利益を還元していません。

誤解を恐れずに何度でも言いますが、諸悪の根源は大企業。自民党としては、自分たちの支持母体でもあるので強く言えないということもあるでしょう。

大学生に3年生から就活させるのもどうかと思います。

日本人の知力がろくでもない理由として、「大企業就活説」を半分冗談、半分本気でぼくは信じていて、新卒一括採用という謎のシステムで、エントリーシートとテキトーな面接で「コミュニケーション能力を見る」。大学を卒業して2年目とか3年目の学生とほとんど変わらない面接担当が兄貴風を吹かせて、圧迫面接をやっているわけですよ。そんなので、なにがわかるのでしょうか? 無意味です。

でもやっぱり新卒一括採用は、大企業の、特に人事部にとっては低コストで合理的なシステムです。人事に手間とコストがかかりませんから。職務範囲を規定して採用するジョブ型雇用待望論もありますが、本気なら民間で好きにやればいいわけです。でも、実現しないまま。

最近は少し変わりつつありますが、この構造では学生にとっては真面目に勉強するのが無駄なんです。学生に勉強するモチベーションがわかない。どうせ就活が〝宝くじ〟みたいなものだからです。腐らずに相対的にマシな転職市場で勝負するのが吉です。

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※本記事は西田 亮介(著), 池上 彰(責任編集)の書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

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