『幸せに生きるための政治』 (西田 亮介 (著), 池上 彰(責任編集)/KADOKAWA)第3回【全9回】
物価も税金も高くなり、日々の暮らしがたいへんになっていく一方で、政治家がらみのさまざまなニュースを耳にする毎日。「このままじゃいけないんだろうけど、でも政治のことはやっぱりよくわからないし...」と過ごしている人も多いのでは? そんな人に向けて社会学者の西田亮介さんが身近な例を挙げてアドバイスし、池上彰さんが責任編集をした書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋してご紹介します。
※本記事は西田 亮介 (著), 池上 彰 (責任編集)の書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
こんな日本に誰がした!「失われた30年」は政治が関係しているのか
かつての日本の強さは、トップの富裕層の伸びというより、「分厚い中間層」に支えられていました。やはりそこがたいへんやせ細ってしまったというのが、失われた30年のなれの果てでしょう。
日本の中間層以下ではこの30年間、消費税の増税、社会保険料の段階的な引き上げ、介護保険料の新たな創設などで、税金と社会保険料の負担が激増しています。
その一方で、企業は景気がよくなっている時期においても賃上げをしませんでした。人件費を圧縮することで利益を生み出してきました。
コストカットは日本の〝得意技〟です。オイルショックも、そうやって日本は乗り越えました。アメリカや欧州との違いはなにかというと、アメリカや欧州はリストラクチャリングで乗り越えました。リストラクチャリングとは、ただ人を切ることではなくて、労働時間を短縮するとか、職場の生産性を上げることです。
ぼくは、失われた30年は政治のせいというより、どちらかというと経済界の罪の方が根深いと考えています。日本の「経団連」に所属するような大企業のことです。日本企業はコストカットをして内部留保を貯め込むだけで、未来に向けての投資をしないから生産性も向上しないし、イノベーションも起こらない。
それから教育や政治、行政のさまざまな審議会や有識者会議で、人をたくさん送り込んで、民営化と規制緩和を主張しました。成果があったでしょうか? JRはドル箱の新幹線を抱える東海を除くと、どこも経営難。郵便局はサービス低下が都市部でも進むばかり。そもそも経済で成果が出ていないのだから、「民間の知」なるものがロクに機能していないのは明らかですので、とりあえずまずは景気と経済をなんとかすることに専心すべき。なのに、声の大きなビジネス・オピニオンリーダーが周回遅れの主張を繰り広げていて、教育や政治、行政などのセクターは多大な迷惑を被っています。