『幸せに生きるための政治』 (西田 亮介 (著), 池上 彰(責任編集)/KADOKAWA)第2回【全9回】
物価も税金も高くなり、日々の暮らしがたいへんになっていく一方で、政治家がらみのさまざまなニュースを耳にする毎日。「このままじゃいけないんだろうけど、でも政治のことはやっぱりよくわからないし...」と過ごしている人も多いのでは? そんな人に向けて社会学者の西田亮介さんが身近な例を挙げてアドバイスし、池上彰さんが責任編集をした書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋してご紹介します。
※本記事は西田 亮介 (著), 池上 彰(責任編集)の書籍『幸せに生きるための政治』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。
「児童手当」のあり方についてまともな議論がなされていない
児童手当というのは、「子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的」(児童手当法より引用)に、子ども1人につき最大月「1万5000円」がもらえるという制度。
世帯年収が960万円以上だと「5000円」に減額され、年収1200万円を超える世帯はもらえません。低所得者ばかりが優遇されていると声を上げる人がいらっしゃる。気持ちはわからなくはないですが、社会保障の原則も、法の趣旨もまったく周知されておらず、ため息が出ます。最近の政治家は国民に不人気な主張をする気がなさそうです。
政府は、異次元の少子化対策の一環として、2024年から所得制限の撤廃や、高校生までの支給延長、それに第3子以降の3万円への増額といった拡充策を発表しました。
ぼくは、控えめにいえば所得制限はどちらでもいいか、あってもかまわないと考えています。「えっ」と驚かれる人もいるかもしれません。誰でももらえるものは多い方がいいし、ぼくだってそうです。だからこそ本当は、ぼくではなく政府や政治家が目先の人気取りに走らず、正面から説明するべきです。