定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師で作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「センテナリアンからピンピン元気の秘訣を学ぶ」です。
100歳以上がついに9万人超
センテナリアン(百寿者)とは、100歳以上の人のこと。
その数は年々増加しています。
今年の敬老の日を前にした厚生労働省の発表によると、国内の100歳以上の人がついに9万人を超えました。
昨年から4000人近く増えています。
男女比では、9割近くが女性。
人口10万人当たりの100歳以上の人口は、島根県が142人で10年連続一位。
その後に、高知県、鳥取県と続きます。
現在の長寿日本一は、大阪で暮らす115歳の女性、巽(たつみ)フサさん。
長生きの秘訣は「三食必ず完食すること」だと言います。
また、「人を愛することが一番」と言うのは、男性長寿日本一の広島に住む111歳の中村茂さん。
食べる力も、他者を愛する力も、生きていくうえでとても大切です。
二人とも施設で暮らしていますが、自分流の生き方をきちんともっていることも、長寿の秘訣なのでしょう。
老化を進める慢性炎症をどう防ぐか
慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでは、センテナリアンの特徴として、糖尿病や肥満が少ないことを挙げています。
ほとんどのセンテナリアンは高血圧や心臓病、白内障などの病気をもっていますが、糖尿病と肥満は少なかったというのです。
これはとても大事なところです。
糖尿病や肥満は、慢性炎症を進めることで知られています。
慢性炎症は全身の老化だけでなく、高血圧や動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、認知症などさまざまな病気と関係しています。
特に、要介護の大きな原因の一つである認知症は、90歳を超えると、男性では2人に1人が、女性では3人に2人が発症するといわれています。
そのおおもとである慢性炎症をどう防ぐか。
それが、100歳を超えてもピンピン元気で生きられるかのカギを握っていると言えるでしょう。
野菜と運動の習慣を身につけよう
では、慢性炎症を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
一つは、血糖値を上げないようにすること。
血糖値が急激に上がった後、大量のインスリンが分泌されて、血糖値が急降下する「血糖値スパイク」は血管を傷つけ、インスリンを出すすい臓も疲弊させます。
食物繊維を豊富に含む野菜やきのこ、海藻などを、食事のはじめのほうでとり、血糖値の急上昇を防ぎましょう。
また、血圧を上げないことも慢性炎症を防ぐには大事。
塩分に注意しながら、塩分を排出する働きをもつカリウムを野菜からとることをおすすめします。
野菜の色素には、抗酸化力があるので、慢性炎症という酸化にもいいのです。
血圧の上昇や血糖値の上昇をもたらす食べすぎは、ストレスにもかかわっています。
ストレスを上手に解消するために、副交感神経を刺激する腹式呼吸を身につけましょう。
ゆったりとした音楽を聞いたり、ぬるめのお風呂にゆっくりつかるのもいい方法です。
また、運動も大事です。
この連載でもたびたび運動の健康効果について紹介してきました。
ウォーキングなどの有酸素運動や、スクワットやランジ(※)などの自重筋トレを続けることが、慢性炎症の予防になります。
運動習慣は、空腹時の血糖値や血圧を下げる効果があります。
※足を前後に大きく開いて、股関節とひざ関節の曲げ伸ばしを行う運動。
タンパク質をしっかりとる
いくつになっても運動できる体をつくるには、タンパク質をしっかりとることも欠かせません。
日本人の高齢者に欠点があるとすれば、タンパク質が足りないことです。
少しくらい脂肪が含まれていても、肉や魚などからしっかりタンパク質をとるほうが、加齢とともに進む筋肉の減少を防ぐことができます。
最近では、プロテインを強化した牛乳やヨーグルト、魚肉ソーセージなどが販売されるようになりました。
筋肉モリモリにしたい若者だけでなく、高齢者も積極的にタンパク質をとってもらいたいと思います。
佐賀県の漢方みず堂では、「こまめにたんぱく」というだしを発売しています。
ぼくも開発にかかわりましたが、植物性タンパク質を粉末にしたもので、味噌汁や煮物に加えることで、うま味も増し、タンパク質を約12g増やせるというものです。
高齢者は、これらの食品を上手に利用しながら、食事の質にこだわって、タンパク質をしっかりとってもらいたいですね。
人への興味や好奇心も大事
先ほど紹介した慶應大学の百寿総合研究センターでは、センテナリアンの性格的な特徴も挙げています。
それによると、男女に共通しているのが、「誠実性が高いこと」。
つまり、長生きする人は決めたことをやり抜く意志があるというのです。
男性は凝り性タイプが多く、女性は外交的で面倒見がよいという特徴がみられました。
新しもの好きで、よく食べるというのも、センテナリアンの特徴として挙げています。
また、熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センターの調査では、100歳以上の元気な人たちは、睡眠時間が長い、ウォーキング、ストレッチ、ラジオ体操などでよく体を動かすという以外に、デジタル機器の使用など好奇心が強いという特徴を挙げています。
いくつになっても、人や新しいものに対して興味や関心をもつことができるのも、長寿の秘訣といえるでしょう。
【カマタのこのごろ】
子どもを生み育てやすい国にするにはどうしたらいいか、市民の声を政府に届けるため、「子ども・子育て市民委員会」を発足しました。弁護士の堀田力さんや、元消費者庁長官板東久美子さんらとともに鎌田實も共同代表を務めています。第一弾として、11月12日(土)、東京・二重橋前「明治安田生命内マイプラザホール」でフォーラムを開催。子育て当事者、経済・労働界、国会議員、地方自治体首長などをゲストに迎えます。詳しくはサイトをご覧ください。