なんとなく調子が悪い...そんな時は医師・鎌田實が教える「ゆるラクずぼらストレッチ」に挑戦

定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師で作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「10歳若返る『ゆるラクずぼらストレッチ』」です。

多くの人が抱いている不調

「腰が重だるい」「元気が出ない」「疲れやすい」「気分がうつうつとする」

内科外来で患者さんの話を聞いていると、そんな訴えをよく耳にします。

病気というほどではないけれど、なんとなく調子が悪い。

それを専門的には「不定愁訴」といいます。

症状がつらく、何かの病気のサインではないかと悩んでいる人は、本人が希望すれば、血液検査やレントゲン検査、ときにはエコー検査などをすることがあります。

その結果、丁寧に「異常はありません。大丈夫です」と説明すると、ほっとして少しだけ調子がよくなることもあります。

しかし、たいていの場合は、治療はほとんど行われません。

ストレスや季節の変わり目のせいにされ、生活指導などもされていないのが現状です。

ストレッチで末梢血管の循環をよくする

ぼくは、内科外来で不定愁訴のある患者さんにストレッチをすすめています。

ストレッチというと、両足を180度開いて、上半身を床にぺたっとつける開脚を想像する人がいるかもしれません。

しかし、医師からすると、股関節の開脚は構造的に90度が限界。

バレエダンサーやアスリートならこうした柔軟性が必要かもしれませんが、一般の人ができるようになってもあまりメリットはないと考えています。

では、何のためにストレッチをするのか。

先に述べた不定愁訴の原因の多くは、筋肉や関節が硬くなり、末梢血管の循環が悪くなっていることにあります。

ストレッチで硬くなった筋肉や関節をほぐして、ゆるめて、伸ばしてやると、血液やリンパの流れがよくなり、むくみやだるさ、疲れなどが改善していきます。

関節も柔らかくなり、転倒によるけがの予防にもなります。

患者さんにすすめるだけでなく、ぼく自身も意識的にストレッチをするようになってから、不整脈がほとんどなくなり、抗不整脈薬も必要なくなりました。

伸ばす筋肉と呼吸を意識するのがコツ

ぼくがすすめるストレッチは、いくつになっても動ける体をつくるために必要なもの。

いわば10歳若返りを目指すストレッチです。

その方法を『カラダが10歳若返る鎌田式ずぼらストレッチ』(宝島社)にまとめました。

そのなかから5つ紹介しましょう。

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新刊の表紙はバンザイストレッチをしているところです。

≪バンザイストレッチ ≫

うつうつとした気分を前向きに、明るくするストレッチです。

(1)足を肩幅くらいに開いて立ち、息を吸いながら両手を前ならえ。

(2)そのまま息を吸いながら、片足を前に少し踏み出して、胸を大きく広げてバンザイをします。

(3)息を吐き切りながら、姿勢を元に戻します。踏み出す足を変えて、左右5回ずつやりましょう。

胸式呼吸をすると、交感神経が刺激され、やる気が出やすくなります。

肩まわりの筋肉がストレッチされるので、肩こりの改善にもなります。

≪お尻とおなかに効く膝抱えストレッチ≫

お尻の大殿筋もストレッチされますが、腸まわりの腹部が刺激されることを意識して行います。

腸を刺激する「腸活」は、免疫力を高め、ストレスで起こりやすい便秘や下痢の改善になります。

(1)両膝を曲げて仰向けになり、3秒で息を吸いながら、おなかを膨らませます。

(2)息を吐きながら、左膝を胸で抱えるようにして7秒間姿勢をキープ。このとき、おなかを凹ませ、息をゆっくり吐きます。足を変えて、左右3回ずつ。

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お尻とおなかに効く膝抱えストレッチ。このまま7秒キープ。

≪95 歳まで自分の足で歩くための腸腰筋のストレッチ≫

腸腰筋は、上半身と下半身をつなぐ筋肉です。

歩くときに足を上げづらくなったら、この腸腰筋が硬くなっているかもしれません。

95歳になってもレストランに行って好きなものを食べられるようにするには下半身が大事。

ウォーキングの前などにストレッチでほぐしておきましょう。

(1)机や壁に片手をついて、まっすぐ立ちます。

(2)片足を前に踏み出し、後ろの足の膝を床に近づけるようにして体を沈ませ、10秒キープします。後ろの足の付け根の前面がストレッチされていることを意識しましょう。足を変えて左右3回ずつ。

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腸腰筋のストレッチ。手をつかずに行える人はそのまま行っても大丈夫。

≪血管ほぐし≫

血管のストレッチです。

血管を指で押すことで、血管を柔らかくする一酸化窒素が増え、高血圧の予防・改善や、狭心症や不整脈の予防につながります。

(1)手首の脈をとる部分(親指の付け根あたり)を人差し指と中指の二本の指を使って、血管をずらすようにほぐしていきます。

(2)そのままひじの関節まで上肢の動脈をほぐしていきます。鎖骨の下のくぼみにある鎖骨下動脈や、足の付け根にある大腿動脈も同じように二本の指で押し、ずらしながらほぐしましょう。

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血管ほぐしはとっても簡単です。

≪尿漏れ対策の骨盤まわりのストレッチ≫

(1)両膝を曲げて仰向けになり、鼻から息を吸い、おなかを膨らませます。

(2)口から息を吐きながら、お尻を上げ、膝と腰と背中が一直線になるようにします。お尻を上げたまま肛門を内臓側へひっぱり込むように意識します。

(3)息を吐き終えたら、息を吸いながらお尻を下げます。(2)と(3)を5回繰り返しましょう。

横隔膜と骨盤底筋群は連動しています。

息を吐くと横隔膜が上がるので、骨盤底筋群も一緒に上がりやすくなります。

骨盤底筋群が強化されることによって尿漏れを防いでくれます。

年齢とともに、ちょっとした段差につまずいたり、尿漏れが起きたり、ということが増えてきます。

90代になっても元気に過ごすために、これらのストレッチをぜひ試してみてください。

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骨盤ストレッチでお尻を上げたところ。上半身から膝まで一直線になるように。

【カマタのこのごろ】

元NHKエグゼクティブアナウンサー・村上信夫さんとラジオ番組『日曜はがんばらない』(文化放送、日曜朝6時20分~)をしています。お陰さまで10年を超える長寿番組になりました。それ以前の3時間公開生放送『鎌田實いのちの対話』(NHKラジオ第1)から数えると、二人でタッグを組んで19年にもなります。毎週、多彩なテーマでお届けしており、リスナーも増えています。インターネットなら都合のいい時間に聞くことができるので、一度聞いてみてください 。

 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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『鎌田實の大人のわくわく健脳ドリル101』

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60代からはソロで生きる ちょうどいい孤独

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新型コロナウイルスにより、人々や社会の価値観は大転換する。災害も含め苦難の多い時代、それでも、私たちは幸せになれる。コロナに負けない生き方、新しい幸福の形とは? 第2波、第3波、そして災害への心の準備は万全ですか?

■「認知症予防」をもっと詳しく知りたい人は!

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「図解 鎌田實医師が実践している 認知症にならない29の習慣(朝日出版社)

今回、鎌田先生が紹介してくださった「認知症予防」が詳しく解説されている最新刊! 医学的に正しい認知症予防の方法が、豊富なビジュアルとともに紹介されています。
「速遅(はやおそ)歩き」「青魚、えごま油、高野豆腐を食べる」「新聞から4つの単語を選ぶ」など、無理なく日常生活で実践できる習慣がわかりやすく解説されています

この記事は『毎日が発見』2022年8月号に掲載の情報です。
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