人気番組「世界一受けたい授業」の出演で話題となった、ルース・マリー・ジャーマンさんの著作『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(あさ出版)。
「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。
※この記事は毎日が発見ネットで配信した記事を再構成したものです。
感謝の言葉がゆたかな日本人
私が日本文化のなかで特に尊敬しているのは、感謝の気持ちを表す表現がゆたかであることです。
「ありがとう」の気持ちを忘れずに表現することの大切さは、どの国でも両親が子どもに言って聞かせます。私自身、両親に教えられ、「Thank you.」という言葉の意味の深さについてよく考えていました。
ところが、日本の日常生活にあるゆたかな「ありがとう」の感謝表現は、ほかの国とは異なります。じつにさまざまな、感謝を表す言葉があるのです。
「ありがとう」「すみません」「恐縮です」「おそれいります」「助かりました」「お世話になりました」「ご馳走さまでした」「お疲れさまでした」
日本に長年いても、その場その場で使い分けられる「感謝の表現」の複雑なニュアンスに戸惑うことがあります。
ちょっとしたおじぎなど、感謝を表すジェスチャーもたくさんありますし、おみやげやギフトの文化に含まれる「感謝の心を表す行為」にも、深い意味や歴史があるようです。
日本人の社会では、ビジネスでもプライベートでも、感謝の気持ちを表すことが習慣となっています。「お礼の気持ち」をどのように表すべきかという「課題」を、無意識のうちにこなしているのです。
もちろん、ほかの国にも「家族を大切にする」「社会活動を行う」などのすばらしい共通認識はありますが、「ありがとう」をここまで極めている文化はめずらしいです。
「ありがとう」と言うとき、必然的に「自分」ではなく、「相手」に焦点が合います。
相手のためにどのように言えばいいか、どのように動けばいいか、何を差し上げればいいかを日常的に考えるようになると、利己的ではなく外向きの視点をもつようになるでしょう。時には、組織のチームワークやグループシンキングが上達することにもつながります。
子どもたちが小さいころ、よく横浜の市営バスを利用していました。
定期的に乗るバスが日野墓地を通ることもあり、お墓参りをするご年配の方をたくさん見かけました。お年寄りたちのほとんどは、バスを降りる前に運転手さんに向かって「ありがとうございます」と声をかけていました。
目的地まで無事に連れていってくれた運転手さんへの、「お礼」の気持ちを、当たり前のように、何気なく言葉にしていることに心を打たれました。
そうした文化が、子どもたちにも根づいていることを、私は誇りに思います。
以前、子どもとタクシーに乗ったときのこと。歳になった娘が下車する際に、無意識に運転手さんにちょっとしたおじぎをし、「ありがとうございます」と丁寧に言うことがありました。
その瞬間、母親としてとても穏やかな気持ちになりました。
これからも日本人のお礼の心を、親子ともども、どの国へ行っても大切にしていきたいと思います。
「日本で暮らせて、ありがとう......」
【次回】レストランでテーブルをきれいする日本人のおしゃれ意識/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと
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39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります