レストランでテーブルをきれいする日本人のおしゃれ意識/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと

人気番組「世界一受けたい授業」の出演で話題となった、ルース・マリー・ジャーマンさんの著作『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(あさ出版)。

「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。

※この記事は毎日が発見ネットで配信した記事を再構成したものです。

【前回】アメリカ人女性が驚いた日本語の多彩な「感謝の言葉」/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと

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世界がまねできない「清潔感」へのこだわり

長男が2歳のときのこと。私たち親子は、里帰り先のハワイでブランチを食べていました。実家があるオアフ島・パールリッジの円形レストラン、「アンナミラーズ」のパンケーキブランチは最高です。シロップとバターがたっぷりのったパンケーキに、ベーコン・カリカリハッシュブラウンと、おいしいコーヒー......。ボリュームたっぷりな「アメリカ式ブランチ」です。

気持ちよく食事を終え、子どもの散らかしたテーブルを整え、お皿を重ねていると、それまでざわざわしていたレストランが、突然静まり返りました。ふと周りを見回して、ほかのお客たちやウェイトレスの視線を浴びていることに気がつきました。ウェイトレスがやってきて、こう言います。

「10年間ウェイトレスをやっているけど、自分たちでここまで後片づけをしているお客さまははじめて!GREAT!」

「日本では普通ですよ。大丈夫、こちらでやります!」

これが日本の「常識」と、世界の「常識」の差なのです。帰国するたびに、「Japan is clean and spotless.(日本人ってすごく清潔らしいですね)」と言われます。外国から来る人にとっても、日本の清潔さが印象的なのです。海外へ行っても、日本ほどの「清潔感」を保っている国はとても少ないです。

海外のホテルのフィットネスの更衣室では、ときどきスリッパがなければ床を踏みたくないときがあります。見た目がよくても、細かいところで不潔に感じる場所がたくさんあるのです。それは日本以外の国では、自分がほかの利用者のために清潔にしよう、ということがほとんどないからです。

清潔な施設を維持するために、施設の責任者や担当者だけでなく、利用者1人ひとりが協力するというのは、日本的な考えです。喫煙者は吸殻をきちんとマナーパックに入れる。自分の家の前の道路だけでなく、となりの家の前まで掃除をする。レストランでは、食べ終わった食器の後片づけをする。

白さとアイロン線が目立つワイシャツをはじめ、磨かれた靴、手入れされた指先など、自分自身の体から始まって、やがて街や国家にまで定着した「清潔感」。清潔感へのこだわりは、日本人ほぼ全員が共有している「気遣いやおもてなし」の精神です。日本の誇るべきものは、伝統や歴史だけでなく、あらゆる場所で習慣化した「清潔な気遣い」と、「衛生的なおもてなし」なのです。

そして、清潔感もさることながら、都会の人たちを見ていると、日本人、特に女性はおしゃれな人が多いなあと感心します。おしゃれなレストランをはじめ、アパレルショップや街などに、とりわけ敏感なのです。

もちろん、ファッションの発信地、ニューヨークやパリに行けば、スタイリッシュな人たちはたくさんいますが、日本人ほど上から下まで完璧にキメている人はそう多くはないでしょう。おしゃれの基準が高く、多くの人がおしゃれを極めたいと思っているのは、世界のなかでもおそらく日本がトップクラスです。

W杯ブラジル大会では、ゴミを拾う日本人サポーターが称賛され、「自分たちが汚した場所を、きれいにして帰るのは当たり前」という日本人のコメントを、どこかで読みました。

彼らは「おしゃれ」という言葉は使っていませんが、「汚したまま帰るのは、おしゃれじゃないよね」ということなのでしょう。だから、ゴミを拾おうとか、片付けようというモチベーションになるのです。私はこのような、日本人のおしゃれ意識も、もっといろいろなことに活用できるのではないかと考えています。

たとえば、自然災害に遭い、何年経っても仮設住宅での暮らしを余儀なくされている人たちが日本各地にいます。本来であれば、もっと復興が進んで、いまごろはみんなまともな住宅に住めるはずだったのに、いまだに状況が変わらないのは「おしゃれではない」と言えるのではないでしょうか。被災者の住宅需要に応えることができないから、3年、4年と延長するのは、とても残念なことであり、このことにもっと声をあげるべきでしょう。

そして、こういったとき、団結力をつくるには「ポジティブな共通点」が必要です。そういう意味で「おしゃれ」の基準はだれでも共感できるポジティブな気持ちですから、どんなに大きなハードルがあっても、立ち向かうパワーが湧いてくるはずです。

こうしたアプローチをすれば、ネガティブな圧力を突破し、みんなが前向きにその改善策に取り組めるのではないでしょうか。

もちろん、そんなに簡単にはいきませんが、日本人のこだわりの1つである「おしゃれ」というキーワードをスローガンとして、社会を動かしていけるのではないかと、期待しています。

【次回】外国人が感動!長野のタクシー会社が世界に誇れるサービス/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと

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レストランでテーブルをきれいする日本人のおしゃれ意識/日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと hokorinisitai_syoei.jpg39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります

 

ルース・マリー・ジャーマン

米国ノースカロライナ州生まれ、ハワイ州育ち。1988年にボストンのタフツ大学国際関係学部から(株)リクルートに入社し、以来30年間日本に滞在。2012年4月に(株)ジャーマン・インターナショナルを起業。日本企業と外国人の潜在顧客をつなげるため、経営戦略と営業・広告活動をサポートしている。2018年に日本企業のグローバル化トレーニングを行う「Train to Globalize」事業も立ち上げる。NHK教育テレビ「しごとの基礎英語」にてビジネスアドバイザーとして出演するなど、メディアでも活動中。

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『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』

(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)

見えないところで努力する日本人は、世界からかっこいいと思われている!?来日30年を超えるアメリカ人著者が、日本で見つけた「39の幸せに生きるコツ」。精神性や美意識、ビジネス論など、5つの観点から日本人をながめてみると、世界に誇れる気質がたくさん見えてくる。著者の体験談を交えて語られるエピソードは、まるで大好きな日本への愛情をつづったラブレター。きっと、日本人に生まれて良かったと感じられます!

※この記事は『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)からの抜粋です。
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