人との距離を取る新しい暮らし方に慣れてきても、悩みが尽きないのが「人間関係」。これを円滑にできる方法の一つに「相槌対話法」というテクニックがあります。そこで、実践的な技術がまとめられた書籍『誰とでも会話が続く相づちのコツ』(齋藤勇/文響社)から、すぐにできる相づちの「さしすせそ」と「あいうえお」の使い方を連載形式でご紹介します。
成功者にかわいがられるのにはワケがあった
基本の相槌、「さしすせそ」の基本中の基本は「さすそ」の三つです。
この三つの威力は抜群です。
「さしすせそ」の「さすそ」以外の「し」と「せ」については、両方とも二つずつ、重要な相槌があります。
まず、「し」の一つ目は、濁点をつけた「じ」の、「実力」です。
話し手の成果を聞いているとき、また、一等賞になったり、表彰されたりした話を聞いたとき、すかさず、
「実力ですね、部長」
「君、実力、あるね」
「実力が示されましたね」
など、話し手当人の力によって、その成果が生まれたこと、一等賞になったことを、この「実力」という相槌で応えることです。
実力がある人に、成果を話されたとき、「実力ですね」というのは、当り前すぎて、言う必要がない、あるいは、おべっかが過ぎる、と思う人がいるかもしれませんが、それは違います。
話している人にとっては、実力の確認が必要です。
一等賞をとったことで確認されているように思うかもしれませんが、能力の確認には、実際の成果だけでは不十分で、それを他の人から、賞賛されることにより、確証できます。
人間は社会的動物なのです。
このため、どんな実力者にとっても、周りからの賞賛が必要です。
一等賞をとった人は、もちろん、大喜びではある。
しかし、喜びながらも、この一等賞はもしかしたら、偶然かもしれないし、相手の失敗によって勝ったのかも知れないなどと、周りの人がどう思っているのか不安を抱えているものです。
それを払拭するのが、あなたの「実力ですね」の相槌なのです。
「実力ですね」の相槌を聞いた話し手は、一等賞が決まったときと同じか、それ以上に嬉しいのです。
この相槌により自分の本当の実力が確信できるのです。
心理学では、このような自分の力を確認したい欲求を自己確証欲求といっています。
それを満たすのが、確証の相槌です。
「実力ですね」は、確証の相槌の最有力の一つといえます。
チーム全員がお互いをほめあい、抱き合い、勝利を確認し合うのは、この確証欲求を満たしているのです。
心理学者ワイナーは、達成行動についての帰属理論を提唱し、成果の原因の帰属について心理学的に分析しています。
その理論では、成果が出たとき、あるいは成果が出ず失敗したとき、その原因をどこにあるか考えます。
その原因が自分にあるのか、自分以外にあるのかを考えるのです。
良い成果が出たとき、自分の能力や努力の成果だと考えるのは自分に原因があるとする内的帰属です。
他の人の助けや偶然によるものだと考えるのは、外部に原因があるという考えです。
良い成果が達成されたとしても、その成果の原因がどちらに帰属するかは、当人の認知(考え方)によるのです。
成功の原因が、自分にあるとすれば、自信が生まれ、自己評価も高くなります。
しかし、その成果が、偶然や誰かの助けで成功したとなると、それほど自己評価は上がりません。
誰もが成果を出したとき、できたら「自分の実力だ」と原因帰属し、自信を高めたいと思っていますが、周りの人がどう思っているか、少々心配なものです。
本当は実力がないのに、他の人の失敗で一等になったと思っているのではないか、という心配もあるのです。
そんなとき、
「実力ですね」
の相槌が、その不安を消し去り、その成果が自分の力によるものだという確認の後押しをするのです。
そんな相槌を打ってくれた人を悪く思う人はいません。
そんな人とは、実力者といえども、いつも一緒にいたいと思うものです。
実力者は、自分の実力を認めてくれる人が、一番好きなのです。
あなたは、その実力を素直に認め、確証の相槌を打ち続ければ、いい友人になるのです。
これで、実力者との人間関係はうまくいき、実力者から好かれるのは間違いありません。
【最初から読む】「すごい!」一つで人間関係の悩みがスッキリ!
コミュニケーションを円滑にする相づちのテクニックが全5章で解説されています