17歳の環境活動家をご存じですか? 知っておきたい「地球温暖化の影響」/池上彰さんの「世界の大問題」

7月に起きた九州や中部地方の集中豪雨など、近年、自然災害が各地で頻発しています。池上彰さんはこの事態をどのように見ているのでしょうか? 新刊『知らないと恥をかく世界の大問題11』(角川新書)の中から、環境問題に関する解説を紹介します。

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台風巨大化のメカニズム

2019年は世界各地で熱波や洪水、干ばつ、台風などが相次ぎ、オーストラリアの森林火災は連日ニュースになりました。

自然災害も深刻です。

豪メディアによると、韓国の面積に匹敵する10万平方キロ以上が燃えたとか。

日本では台風19号の影響で神奈川県川崎市武蔵小杉のタワーマンションで停電や断水が続きました。

災害時のタワーマンションのもろさが一気に露呈しました。

このところ台風が年々巨大化しています。

どうして大きくなるのか。

台風は赤道近くの海上付近で発生します。

赤道あたりは暑いので海水が暖められます。

高温になると水蒸気がどんどん上昇します。

周りから渦をまきながら風が集まってきて、高い所へ行くと気温が低いので水蒸気が急激に冷やされて雲ができます。

この雲がコマと同じように回転しながら移動し、発達して台風になるのです。

台風19号が近づく前、日本のすぐ南側の海の水温は例年に比べて1℃から2℃くらい高かったといわれています。

たった1℃でと思うかもしれませんが、この1℃の違いが台風を大きくさせる原因なのです。

異常気象によって「想定外」の巨大台風が増えています。

温暖化のせいでヨーロッパが寒冷化?

異常気象でアフリカではサバクトビバッタが大量発生しました。

前野ウルド浩太郎氏の『バッタを倒しにアフリカへ』で知りましたが、サバクトビバッタは定期的に大量発生し、アフリカを襲い人間の食料を喰い尽くすのだとか。

とくにソマリアとエチオピアでは25年に1度、ケニアでは70年に1度と呼ばれる大規模な群れが襲来し、被害が深刻化しているようです。

国連食糧農業機関(FAO)は「地域の食糧安全保障にとって大きな脅威」として、国際社会に7000万ドル(約76億円)の緊急支援を求めました。

バッタの大群は大雨などの天候不順が続くと大量発生するのですね。

国連の世界気象機関(WMO)によると2019年は観測史上過去2番目に暑い年となったそうです。

地球温暖化は待ったなしの大問題です。

そんな中、注目されたのがスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんです。

「各国の指導者には未来といまの世代を守る責任がある」。

彼女は国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)が開かれたスペイン・マドリードで、地球温暖化対策を要求するデモに参加し、こう訴えました。

温暖化ガスの排出量が多い飛行機の利用を批判し、COP25に参加する際もヨットで移動する姿がニュースになりました。

ちなみにCOPとは、〝条約を結んだ国が集まる会議〟のことで温暖化に限りません。

たとえば、水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約である「ラムサール条約」などもあります。

ですが世界で一番有名なCOPが国連気候変動枠組条約でしょう。

俗に地球温暖化対策に関する条約ですが、国連では温暖化とはいわずに「気候変動」といいます。

というのも、ヨーロッパは地球温暖化の影響で「寒冷化する」という説があるのです。

ヨーロッパでなぜそんなことが起きるのか。

イギリスやフランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国は緯度的には日本の北海道より北に位置します。

サハリンと同じくらいの緯度なのに暖かい。

それは赤道付近から運ばれてくるメキシコ湾流の恩恵を受けているからです。

赤道付近で暖められた水が海流に乗ってヨーロッパに流れ込む。

ところが温暖化が進むと、たとえば北極の氷が融けたりします。

氷は淡水です。

淡水は比重が軽いため、沈み込みが起きません。

冷たい海水は比重が重いので北の海水が下に潜り込むことで大きな海の流れができるのですが、淡水だとそれが起こらないので還流のエネルギーが止まってしまうのです。

まるでベルトコンベアーが止まるかのように。

以前、そんな映画がありました。

『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年製作)です。

地球温暖化によって極地の氷が融解し真水が海へ流れることで海流の急変が発生し、欧米に氷河期が到来するというストーリーです。

そんなことが現実になるかもしれないのです。

各国の指導者を叱る17歳の環境活動家

2019年、ノーベル平和賞を受賞するのではないかともいわれたグレタ・トゥーンベリさんは、15歳だった2018年夏、地球温暖化に危機感を持ち、たったひとりでスウェーデンの国会議事堂の前に座って「気候のための学校ストライキ」を始めました。

最初はたったひとりでしたが、瞬く間に世界に広がりました。

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2019年9月23日、ニューヨークの国連本部で開かれた「気候行動サミット」に合わせ、世界約160カ国以上で計400万人以上の若者が一斉にデモ行進をしました。

サミットでのグレタさんの約4分間の怒りのスピーチは、メディアでも大きく取り上げられました。

その一部を紹介します。

「人々は苦しんでいます。人々は死んでいます。生態系は崩壊しつつあります。私たちは大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よくそんなことが言えますね」

「あなた方は私たちを裏切っています。しかし若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来の世代の目は、あなた方に向けられています」

ここまで危機感を募らせるほど地球温暖化対策を怠ってきた大人たちの責任を感じます。

このグレタさんといい、香港で民主化運動の先頭に立つアグネス・チョウ(周庭)さんといい、このところ世界では若い女性の活動が目立ちます。

私たちは若者たちの危機感をしっかり受け止めることができるのでしょうか。

(第5章「グローバル時代の世界の見えない敵」から抜粋)

イラスト/斉藤重之

 
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知らないと恥をかく世界の大問題11

池上彰/角川新書

突然世界を襲った新型コロナウイルス。コロナ危機対策の行方、そして大転換期の裏で進む世界の変化とは? アメリカ大統領選挙が行われる2020年の世界の大問題を、歴史的な経緯と、いまをやさしく説明しながら解き明かします。人気新書シリーズの第11弾。900円+税。

この記事は『毎日が発見』2020年10月号に掲載の情報です。
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