池上彰さんが解説する世界の大問題「米中関係の今後は?」

池上彰さんの話題の新刊『知らないと恥をかく 世界の大問題10』(角川新書)が刊行されました。激動の今こそ知っておきたい、国際社会のニュースを幅広いテーマで扱っている中から、今回は「米中関係」についてのポイントを抜粋してご紹介します。

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いまの米中関係を「トゥキディデスの罠」と、国際情勢をみる専門家は言います。
トゥキディデスとは『戦史』を書いた古代ギリシャの歴史家です。
新興のアテネが強大になり、スパルタに恐怖をもたらしたことが戦争を必然ならしめた。『戦史』は、トゥキディデスが紀元前5世紀の古代ギリシャ世界で発生したペロポネソス戦争の原因について考察した歴史書です。

アメリカの政治学者グレアム・アリソンは、この本をもとに、大きな権力を持つ覇権国家があるところに、急激に成長する国が出てくると、それを抑えようとする従来の覇権国家と新しく覇権を奪おうとする国との間で衝突が起きる――これを「トゥキディデスの罠」と名付けました。

アリソンによれば、アテネ対スパルタにはじまり、第1次世界大戦は覇権国家イギリスに対し、ドイツが挑んだ戦争だった。過去の歴史を振り返ると、大きな戦争は、覇権国家の交代によって起こっているケースが多いと分析しています。21世紀初頭のいまは、まさにアメリカと中国がそういう状況なのではないかというわけです。

しかし、アメリカのマイク・ペンス副大統領は覇権にチャレンジする中国に対し、こう言っています。
「中国はほかの全アジアを合わせたのと同じくらいの軍事費を投じ、米国の陸、海、空、宇宙における軍事的優位を脅かす能力の獲得を第一目標としている。中国は米国を西太平洋から追い出し、米国が同盟国を救援に訪れるのを阻止しようとしている。しかし、彼らは失敗するだろう」

池上彰さんが解説する世界の大問題「米中関係の今後は?」 P82_01.jpgペンス副大統領は2018年10月4日、演説で中国の「知財(知的財産)戦略」「グレートファイアウオール(中国のネット検閲システム)」「宗教弾圧」「一帯一路構想」を激しく批判しました。

過去のアメリカ政権は中国の行動を見逃してきた、野放しにしてきたが、そのような日々は終わったというわけです。

アメリカも中国も核兵器を持っています。ただし、核のボタンは押せません。したがって、これを「米中新冷戦」と呼ぶ人もいます。

※同書の「プロローグ『転機』を迎える世界と日本」から一部抜粋しています

写真/村越将浩 イラスト/斉藤重之 デザイン/根岸良介(omodaka)

 
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知らないと恥をかく世界の大問題10 転機を迎える世界と日本

池上彰/KADOKAWA・角川新書

累計186万部の大好評シリーズの最新刊です。テーマは米国、中国、EU、そして日本など。860円+税。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

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