仕事も人生も「メリハリ」が大事!「力を抜く」と得られる心へのメリット

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頑張り続けるよりも力を抜くテクニックが大事

「メリハリ」とはよく聞く言葉です。辞典で調べると、漢字では「減り張り」と表記されます。ものごとに強弱、緩急をつけるニュアンスで「仕事にメリハリをつける」「メリハリをつけた練習をこころがける」などと使われます。

緩急、強弱を指す「メリハリ」は、持続力を維持できるという点では、大切な概念です。豪速球で押すタイプのピッチャーは、肩の酷使などもあって総じて選手生命が短いでしょう。プロゴルファーも、飛距離自慢だけでは大成することはありません。どのスポーツにおいても、力業だけでは長続きはせず、技能によって「力を抜く」テクニックが求められるのです。

「メリハリ」を、「急性胃炎」など病気の症状でおなじみの「急性」と「慢性」という2つの視点で考えてみるのも、面白い試みです。急性は、「メリハリ(減り張り)」でいう、「張り」の部分です。短時間にエネルギーを集中的に注いでおこなうものを指します。100mダッシュや重いバーベルを上げるなど、瞬発的な動作をイメージするといいでしょう。

このような短時間ながら激しい「急性」の動きは、脳の覚醒レベルを上げることが知られています。こうした動きによって、刺激に対するレスポンスまでの時間が早くなる、あるいは判断力がアップするといったメリットが生じます。

これらの効果は、前にも触れたとおり、注意・覚醒の神経伝達物質であるノルアドレナリンのはたらきが活発化することによると考えられています。激しい運動の直後は食欲がなくなりますが、ノルアドレナリンによって胃腸の活動が抑えられることからも、ノルアドレナリンと「急性」の運動の関連は間違いなさそうです。

一方で、散歩や長距離走、ストレッチなど、長時間にわたって活動を維持し続ける「慢性」の動きは、気分を向上させることが知られています。長めのリズミカルな運動で活性化するのは、うつ・不安をやわらげる神経伝達物質セロトニンです。

ノルアドレナリンの「急性」効果が「脳がスッキリ!」という鮮やかな感覚ならば、セロトニンによる「慢性」効果は「なんとなく気が晴れる」というマイルドなものかもしれません。

「メリ」と「ハリ」のメリットを交互に得られるイメージトレーニング

「メリハリ」をつけるやり方には、ノルアドレナリンとセロトニンという異なった神経伝達物質が、役どころを変えて交互に持ち味を発揮できるという強みがあります。これを活かさない手はありません。

「メリハリ」の「減り」の部分では、ゆったりとリズミカルに「慢性」的な動きをするのが効果的です。もちろん、ひと息ついて席を立ち、休息するのでもかまいません。休むことは、セロトニンの機能を高める効能があるだけではなく、ノルアドレナリンの刺激によって疲れた心身をいったん休めるメリットもあります。

ノルアドレナリンによる「急性」の刺激ばかりが続くと、心身の疲弊は避けられません。交感神経の刺激が続きすぎてしまい、持続力がなくなるデメリットもあるのです。競馬の距離くらいならば、騎手が鞭を振るっても走り切れるでしょうが、もっと長距離であれば、鞭をビシバシ振るい続けたとしても、走り続けることはできません。

「メリハリ」という言葉にも、科学的な裏付けがあると思えば、もっとまじめに「メリハリ」をつける気にもなるのではないでしょうか。持続力を考える際には、ノルアドレナリンとセロトニンとの振り子運動が、長続きのコツだとイメージするのがお勧めです。

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仕事も人生も「メリハリ」が大事!「力を抜く」と得られる心へのメリット 055-syoei-yasumu.jpg科学的根拠と臨床経験を基に、過ごし方や取り方など「休み」について、5章にわたって徹底解説

 

西多昌規(にしだ・まさき)

1970年、石川県生まれ。精神科医、医学博士。早稲田大学スポーツ科学部学術院准教授。東京医科歯科大学卒業。精神科専門医、睡眠医療認定医。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。主な著書に『精神科医が教える「集中力」のレッスン』『感情に振り回されない技術』(ともに大和書房)などがある。

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『休む技術』

(西多昌規/大和書房)

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※この記事は『休む技術』(西多昌規/大和書房)からの抜粋です。

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