「今日のごはん、作りたくない...」と思ったことありませんか?料理レシピ本大賞2019「エッセイ賞」受賞で話題の書籍『料理が苦痛だ』(自由国民社)から、著者・本多理恵子さんが気づいた「苦痛の正体」を連載形式でお届けします。今夜のごはんを作る前に、まずは料理の「呪縛」を探ってみませんか?
「自分はちゃんとできていない」という呪縛
料理が嫌い・作るのが嫌だ・今日もインスタント食品で済ませてしまった......そりゃあ自己嫌悪にもなるでしょう。わかります。私もそんな時あります。母や妻であるのに、自分は料理が嫌いだ。ちゃんと作ってもいない。だいたい女だからって料理を作らねばならないのか?と疑問にも思うし不公平だとも感じる時もある。けれど、そんな風に声高に提議してみる気もなければ、戦う気持ちもない。
ただ、毎日のご飯が......これじゃダメだと思っている。
私は仕事を通じてたくさんの「主婦」の方と触れ合う。そのほとんどが「料理が苦痛」と感じていることに驚いている。
女性は料理が好きというは幻想だ。「男性ならば車の運転や大工仕事が好きで、女性ならば料理や手芸を楽しいと思う」っておかしくありませんか?何が好きか?楽しいか?とは、人それぞれ。
たしかに料理には楽しい面があると思う。考えて・作り出すという想像に溢れた仕事だ。ちょっと美味しくできた時など「自分天才じゃない?」とほれぼれする。
しかし、たとえ楽しいことであっても、それをずっと続けていればいつしか嫌いになることだってある。失敗することだってある。自分のために作った料理が失敗してもそれは自分だけの問題だが、家族のためのご飯が失敗したらちょっとした事件だ。自分一人の問題じゃない。そしてたいそう落ち込む。
実際「料理が楽しい」という人の中には、それが「気晴らし」「非日常」だからと言う人も多い。残業が多い会社員から「たまに早く家に帰り、手間ひまかけて自分のために料理を作るのが最高の息抜き」と聞くことがある。無心に玉ネギを刻む時、瑞々しいレタスを手で二つに割る時、エビの殻を剥いて丁寧に下処理をする時、嫌な上司のことやクライアントからのダメ出しも「忘れられる」という。
ところが主婦・主夫にとっての料理は、毎日・毎回向き合う「日常」だ。
それが毎日毎回であったら、玉ネギのみじん切りは罰ゲームでしかない。エビの下処理をしたくないがために迷いなく剥きエビを買う。
一口に料理が嫌いといっても、その中で特に嫌い・苦手な工程があるものだ。自分はどの作業が嫌いか知っておくと対策がとれる。
私は食材を切ったり、細かく刻んだりするのが嫌いだ。だから食材を切る時は一気に全部切ってしまう。また、フードプロセッサーも多用している。さらに食材を切る時は少しでも手間を省きたいので順番をとてもよく考える。同じまな板で匂いが移らない順番で切り進めるにはどうしたら良いだろうかと。
嫌な事を省力化するのにとにかく知恵を出す。買い出しが嫌い、洗うのが嫌い、そもそも献立を考えるのが嫌い。自分の嫌いを把握しておけば、そこだけ外注・手伝いを頼んだりもできるし、行程短縮のために手順を考えたり家電を揃えたりもできる。例えば、買い出しならネットオーダー。洗うのなら食洗器。献立を考えるなら食材宅配サービスやアプリを使う。
そしてもし、料理を作ることに関する全部が嫌いになってしまったら、全てをやめよう。ダメ出しをする他人には決して惑わされないでほしい。もう何もかも嫌いになる時、誰にでもあるから。
料理をすることによってストレスから解放される人と、料理自体がストレスな人がいる。これはお互い全く別世界に生きている人で、どっちも同じく正解で正しい。
毎日作っていたら「もう作りたくない」「誰かが作ってくれたご飯を食べたい」そう思うのは当たり前。
友達の家に行って、「何もないけど鍋食べてく?」と言われて食べた豆乳鍋の美味しかったこと。食後のお茶はマグカップにティーバッグを入れっぱなしだったけど、人が淹れてくれたお茶は最高に美味しかったこと。
作り続けたらイヤになって当然。料理バロメーターがショート気味になったらまず休もう。自分を責める前に。それは当然の休息だ。
「料理が苦痛なので、今日は作りません」。
家族の食事を用意する全ての人が共感!「料理が苦痛だ」記事リストはこちら!
著者自身の背景から始まり、3ステップで実現できる苦痛を減らす方法や、「蒸す」「焼く」「煮る」だけで完成する11の苦痛軽減レシピが、5章にわたってまとめられています