災害が起こったら避難所へ避難すればいいと考えている方が多いと思います。では、避難所に行けば安全なのかというと、そうとは限りません。
「日本は避難所が少ないせいもあり、1人に与えられるスペースは約1畳分、仮設トイレは50人に1台です。しかしスフィア基準(人道憲章と人道対応に関する最低基準)が推奨しているのは、1人3.5平方メートル、トイレは20人に1台以上です。また避難所は騒がしく、眠れないなどあり、阪神・淡路大震災では919人もの方が、避難所で亡くなっています」
そう話すのは、多くの企業や自治体の防災アドバイザーを歴任する山村武彦先生。今回は、避難しなくても生活ができるよう自宅の家具・家電の「タイプ別防災対策」について、押さえておきたいポイントをお聞きしました。
固定器具は1つから2つ以上の時代へ
地震が起こり家具類が倒れ避難経路がふさがれたら、逃げたくても逃げられません。さらに2018年の大阪北部地震では、ポール式の器具で固定していた家具が倒れて住民が下敷きになり、亡くなったケースがありました。「この事例も踏まえると、固定器具は1つでは揺れに耐えられず、効果が少ないといえるのです。ですから、固定の際は必ず2カ所以上、複数種類を組み合わせるようにしてください」と山村先生は言います。
また、窓ガラスなどが割れて飛散したら歩けず危険です。飛散防止フィルムを貼ったり、テレビの下を粘着マットで固定するなどしてください。食器棚は重い物を上に収納すると地震時に飛び出る恐れがあるので、軽い物を上、重い物は下に収納しましょう。このように事前に見直し、家の中の安全性を高めてください。
●家具類・家電
家具や冷蔵庫は動かないように、ポール式やL字形金具で上下2カ所以上固定を。家電は製造元で専用留め具を販売していることもあります。パソコン、テレビは粘着マット(ホームセンターで販売)で2カ所以上固定を。
固定時の注意
自宅の壁が石膏ボードの場合は裏側に空洞部分があり、そこに釘を打つと揺れなどで外れてしまいます。壁をたたいて硬い音がするところに木材が入っているので、そこを狙って取り付けてください。
●食器棚
揺れによって中の食器が飛び出すと、割れた破片でけがをしてしまいます。現在、いろいろなストッパーがホームセンターなどで販売されていますので、扉の形状に合ったストッパーでしっかりと固定しましょう。
●ガラス類
夜間に災害などで停電になり、室内が暗くなると、割れたガラスの破片をよけて歩くのは困難。窓、食器棚、お風呂の鏡など、全てのガラス類に飛散防止フィルム(ホームセンターなどで販売)を貼りましょう
●照明器具
つり下げ式の照明器具は、天井を補強した上で、できれば直付けするのが望ましいですが、無理なケースもあるでしょう。その場合、釣り糸などで天井から照明を3カ所固定して、振れ止めをしましょう。