あなたの家は大丈夫?「木造住宅の耐震基準」の基礎知識

定期誌「毎日が発見」読者の皆さんに実施したアンケートで、多くの方からいただいたのが「家」の悩み。そこで、災害から家を守る方法や、家を売却して住み替える方法、ご近所トラブルの対処法などを特集し、連載形式で配信します。今回は、東京大学名誉教授の坂本 功先生にお聞きした「耐震基準」について。

あなたの家は大丈夫?「木造住宅の耐震基準」の基礎知識 P014_2.jpg1995年に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)により、新耐震基準以前に建てられた多くの店や家が倒壊した。

自分の家を守るために耐震診断をしましょう

日本の家といえば昔から「木造住宅」が主流ですが、新築する際には、どのような材料で、どう作るのかという基準を定めた「建築基準法」があります。現在も続くこの法の根幹
が作られたのは、大正時代であることをご存じでしょうか?

「建築基準法の大もとは、1919(大正8)年の市街地建築物法なのです。その4年後の1923(大正12)年に関東大震災が起きて、多くの建物が倒壊したことから、耐震性を見直すことになり、1924 (大正13)年に、市街地建築物法の中に耐震基準が取り入れられたんです」と坂本功先生は教えてくれました。

さらに、1950(昭和25)年には、戦後の社会状況や建築技術の進歩に合わせて、「市街地建築物法」をより具体的な内容に改めた「建築基準法」を施行。しかし、日本は地震大国。

1968年には十勝沖地震が発生。耐震・耐火の建物といわれていた鉄筋コンクリート造が倒壊し、すでに建っている建物の耐震性について見直すため「耐震診断法」を作ることになりました。1977年に鉄筋コンクリート造建物、1978年に鉄骨造建物、1979年に木造住宅の耐震診断法を作成。新築に対しては1981年に、震度6~7程度の大地震が起きても人命に関わる倒壊被害が出ない基準である「新耐震基準」が施行されました。

しかし木造住宅の耐震法は、あまり活用されませんでした。その後1995年に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で、耐震診断が注目され、活用されるようになりましたが、まだまだ一般の人には浸透していないのが実情だそうです。

「特に、1981年の新耐震基準以前に建てられた家は、耐震性に関し不十分な場合がありますので、見直した方がいいでしょう」と坂本先生。

あなたの家は大丈夫?「木造住宅の耐震基準」の基礎知識 P014_1.jpg1995年に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)により多くの高速道路が崩壊した。

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同震災で、街のあちこちで火災が発生し、車で避難する住民。

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同震災で、多くの木造住宅が倒壊し、ガス管などが壊れて出火。次々と燃え移っていった。


■建築基準法の歩みを学びましょう

1919(大正8)年 「市街地建築物法」施行
日本が近代国家になって初の建築に関する法律で、全国の主要都市に適用された。保安、衛生、都市計画等の観点から、主に建築物に対する制限を規定している。

1923(大正12)年 「関東大震災」(M7.9)

1924(大正13)年 「建築基準法」施行
関東大震災で多くの家が倒壊したことをきっかけに、市街地建築物法を改正。設計する際に、最低限度の耐震性を持つ建築物を建てるよう耐震基準を取り入れた。

1950(昭和25)年 「建築基準法」施行
第2次世界大戦後の社会状況や建築技術の進歩に合わせて制定。「市街地建築物法」よりも具体的かつ詳細に規定。

1968(昭和43)年 「十勝沖地震」発生(M7.9)
この地震で鉄筋コンクリート造の建物が倒壊したことをきっかけに、1977(昭和52)年に鉄筋コンクリート造建物、1978(昭和53)年に鉄骨造建物、1979(昭和54)年に木造住宅の耐震診断基準が作られる。

1981(昭和56)年 「新耐震基準」施行
震度6~7程度の大地震が起きても人命に関わる倒壊に至るような被害が出ないよう新耐震基準に改正。

1995(平成7)年 「兵庫県南部地震( 阪神・淡路大震災)」が発生(M7.3)

2000(平成12)年 「新耐震基準」一部改正
「兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)」で多くの木造住宅が倒壊したため、木造住宅の耐震性を高めるために、壁配置の規定や、筋交(すじか)い・柱を留める金具の種類を明確化。

2004(平成16)年 「新潟県中越地震」が発生(M6.8)

2004(平成16)年 「木造住宅の耐震診断基準」大改訂
建築基準法の壁量計算を焼き直したそれまでの診断法から、その直近までの耐震工学の研究成果を盛り込んだ診断法に作り替えた。

2012(平成24)年 「木造住宅の耐震診断基準」改訂
広く使われるようになったことに応じて、基本的な内容は変えず、技術者にとってより使いやすいものとした。

取材・文/中沢文子 写真/PIXTA  取材協力/一般財団法人 日本建築防災協会 デザイン/ohmae-d

 

坂本 功(さかもと・いさお)先生

東京大学名誉教授。(一財)日本建築防災協会理事長。工学博士。東京大学工学部建築学科教授などを経て耐震・建築構造、木造住宅の耐震性といった分野に尽力。防災功労者内閣総理大臣表彰受賞。著書に『地震に強い木造住宅』などがある。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

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